メリーゴーランド127

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「それはそうか知れんけど、工藤さん、俺の知らんうちにことを進めるのんはやめてください」
 きっちり言うと、工藤が「わかった」と頷いた。
「だが、これからおそらく次回作も制作するだろうし、ドラマもあるぞ」
「はあ? それって……」
 千雪はふう、と息を吐く。
「鬼の工藤は狙ったもんは外さないってよ」
 すると目の前に座っている井上がニヤニヤと言った。
「しかし、さすがベストセラー作家だ。業界で鬼と恐れられる工藤に真っ向から文句言うって」
「変な感心の仕方せんといてください」
 今度は井上を千雪は睨む。
「んな、他人行儀な、タメ口でいいって」
「思いっきり他人やけど」
 すると工藤がまた笑う。
「腕はまあ、悪くはない。映画関連の撮影は任せている。フリーがいいっていうんで嘱託だが」
 お茶のあと、鈴木さんを残して上の階にあるスタジオ風の部屋に移動した。
「どうせならこのビルの中にスタジオ作ればいいのに」
 既にセッティングは済んでいて、あとは被写体だけがそこに立つか座るかすればよしというようになっていた。
 パンフレットに載せる画像を撮るというが、千雪はとにかく写真は極力避けたいところなのだ。
 先日の座談会形式の撮影だけでも十分だろうと言いたい千雪ではあるが、ごねてもどのみち意味がないのだろう。
 万里子が隣の部屋で千雪にメイクを施しているうちに、志村の撮影が始まった。
「千雪さん、恋人いるんだっけ?」
 眼鏡を取った千雪を見つめながら万里子が唐突に聞いた。
「うーん、いるようないないような………」
「何それ。あ、わかった、工藤さんだから?」
「あのいつかのモデルさんのことやったら、工藤さんがたまたまその場にいた俺を勝手に利用しただけやから」
「ええ? そおなの? 隠さなくても」
「隠してないし。ほんまに工藤さん、はた迷惑や」
「フフフ、でも、彼女、あなたに負けたって感じだったみたいよ?」
「はあ? あのモデルさん知ったはるん?」
「名前はね。蛇の道はヘビとか言うじゃない。こういう話はどこからともなく耳に入ってくるのよ。彼女、ちょっと工藤さんに夢中になり過ぎたのね。彼女の事務所はしばらく彼女を海外に行かせるみたい」

 


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