メリーゴーランド128

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「ここの人は?」
「今、大阪行ってるし。もう楽にしててええで」
 アスカはあたりを見回しながら、ソファに座る。
「にしても、もう、いったい何やねん? 誰に追われとんの? 事務所の人? 誰やわかっとんの?」
 千雪に矢継ぎ早に質問されて、アスカは唇を尖らせた。
「多分」
「多分て、わけは? 何で追われとんの?」
「そんな、怒らなくていいでしょ。あたしだって、わけわかんなかったんだから!」
 アスカは千雪に言い返す。
「けど何? 君の家にまで押し入って何か探しとったみたいやんか。ひょっとして君、何か持ってるん?」
 するとアスカはうーんと頭に手をあてて考え込んだ。
「まさか……あれ?」
 はたとアスカが顔を上げ、斜め掛けにしていたポシェットを開くと中からまずデコラティブな携帯を取り出し、化粧ポーチを取り出し、その後で何かを取り出した。
「これ」
 アスカが差し出したのはモフモフな毛玉のついたキーホルダーのようだった。
「何これ」
「事務所の廊下で拾ったのよ。慌てて追いかけたんだけど、これ落としたの先輩のモデル。すぐに車で出て行っちゃって」
 訝し気に眉を寄せ、千雪はそのキーホルダーを隅々まで調べた。
「あれ………」
 モフモフの毛玉の中に見つけたもの。
「どうしたの?」
「ほら」
 毛玉が袋状になっていて、中からマイクロSDカードが出てきた。
「うわ、何、それ?」
 何だかきな臭いことになってきたと思いつつ、千雪はノートパソコンを探した。
「どこやねん! ノート!」
デスクの上にもテーブルの上にもない。
「ってノートパソコン?」
「か、タブレットか」
「ひょっとして、ピアノの上に積み重なってる本の………」
 本と本の間に薄いノートパソコンが挟まっていた。
「ったく、何が、本くらい整理しろや。まんまお前に返すわ!」
 俺の部屋来る前にちょっと片付けや。
 不在の主人に文句を言いながら、千雪はピアノの上でノートを開いた。
 しかもふざけるのも大概にと思ったのが、パスワードが千雪の誕生日なのだ。
 千雪はカードをパソコンで開いた。
「何や、これ。あらら、ヤバイやつやわ、これ。黒いスーツのにいさんらが血眼で探しまわるわけや」

 


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