「何が入ってるの? ヤバイって?」
アスカも興味津々で千雪の横からパソコンの画面を見た。
「え、これ、やっぱ児島副社長? とアリシア? さっき言った先輩のモデル。え、これって………」
児島副社長とアスカが呼んだ中年の男といちゃつきながら差し出しているアリシアの手に目の前の黒いスーツの男から渡されているのは白い小さな袋だ。
「ヤバイで、相当。やっぱこの黒のスーツのニーサンら、反社会的勢力の一員やな、どうみても」
「え、どうしよう………」
アスカが身を固くした。
「やっぱり警察に届けなきゃ」
アスカも決意したようだったが、千雪は眉を寄せたまま「確かに警察にいうしかないけど」と言って言葉を切った。
「警察なんかアホな連中ばっかやから、よほど考えてからやないとな。マル暴とかになるんやろか」
アスカはそんな千雪をじっとみつめた。
「そういえば、あなた、誰?」
「人に名前を聞く時は自分から名乗るもんや」
するとアスカはちょっとムッとした顔をした。
「あたしは中川アスカ。あなたは? 青山プロダクションの人? モデルとか?」
「俺は小林や。モデルなんかやあれへんし、青山プロダクションの人間でもない。にしても、どないしょ、やっぱ、これは専門家に任せるべきやろうし………」
これでも結構世間に知られていると思っていたアスカだが、一緒にいてこんなに自分に興味を示さない人間は初めてだと、妙に感心して千雪を見つめていた。
「やっぱ、とりあえず、渋谷さんに…………」
ブツブツ呟いていた千雪は、「ひょっとしてあなたじゃないかと思ったんだけど、山之辺芽久が言ってた、工藤さんの新しい相手って」と言うアスカの言葉に振り返った。
「山之辺芽久? て、まさか、青山プロダクションに押し掛けてワーワー泣いてた子のことか?」
またあの子のことかと、千雪は胡乱な目を向ける。
「やっぱり! うちの先輩モデルよ。工藤さんに首ったけで会いにいったら、工藤さんがすっごく美人を新しい相手だって言ってたって」
「やから! イチイチ説明するんもあほらしいけど、あれは工藤さんがその子を切るために俺を勝手に利用しただけや! あの子が勝手に勘違いしたみたいやけど、俺は男やし」
「だって、工藤さん、どっちもOKでしょ」
千雪は一つ大きく息を吐くと、「どうでもええけど、工藤さんと俺はそういうんやないから」と念を押した。
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