メリーゴーランド130

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「え、じゃあ、何者? 工藤さんと親しいじゃない?」
 そう言われて、千雪は適当なウソが思いつかなかった。
「そんなことより、自分のことを考え!」
「あ、ごまかした!」
 千雪はアスカを放っておいて、携帯で渋谷にかけてみた。
 何回かのコールのあと渋谷が出た。
「はい、何かあった?」
 千雪から電話をすることが珍しかったのか、渋谷はすぐに聞いてきた。
「折り入ってご相談したいことがあるんですけど」
「千雪くんからとか、よほどのことだよね? 実は今取り込み中で、そうだな、八時頃こっちに来てもらって俺を呼んでもらえるかな?」
「ええですけど、ほんまに八時までに逮捕でけるんですか?」
「え? 俺、今、何も言ってないよね?」
 図星のようだ。
「ほな、時間までに捕まえたってください」
 携帯を切ったが、サイレンの音が入っていたし、刑事が取込み中と言ったらそんなことしかないだろうとカマをかけたら、ゲロしたも同然だった。
「誰に電話したの?」
「刑事」
「え、刑事に知り合いがいるの?」
「まあ、その人やったら、まだマシやろうから」
 携帯の時間は六時少し前だ。
「七時半に出ればええか」
「ねえ、お腹すいた」
 千雪が渋谷に逢う算段をしていると、アスカが千雪に訴えた。
 はあ、とまた大きくため息を吐くと、千雪はキッチンに向かい、冷蔵庫を開けた。
 京助のことだから、何かしらの食べ物はあるはずだ。
様々な調味料から、食材がきっちり入っているが、すぐに食べられそうなものが見当たらない。
冷凍庫を開けてみた。
タッパや保存袋がたくさん入っていて、イニシャルらしきものが書いてあるが、どれがすぐに食べられるものかわからない。
「bs? これ、ビーフシチューやないか?」
「うわ、すっごおおい!」
 急に背後から声がして、千雪は振り返った。
「何者? あなたのダチって。シェフとか?」
 うーん、確か、小夜ねえと紫紀さんの婚約パーティの時、京助と言い争いしてたよな。
 ほな、あんまり仲ええわけやないんか。
「わ、これ、タルトタタンじゃない?!」
 勝手に冷蔵庫を覗いてアスカが声を上げた。

 


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