「ほな、それと、これ、多分ビーフシチューやと思うわ」
二人はタルトタタンの皿とビーフシチューのタッパを取り出して、テーブルに置いた。
千雪は京助に教わったように、ビーフシチューをレンジで数分過熱すると、耐熱容器に移し替えてラップをかけ、さらにレンジで温めた。
タルトタタンはラップを外して切り分け、皿に取った。
湯を沸かしているうちにマグカップとポット、紅茶を戸棚から取り出し、ポットに入れた紅茶に湯を注ぐ。
「すごおい! こんな食事がすぐにできるなんて、あなたのお友達って、すごいわ!」
教授のお供で学会に出席し、おそらく夜は教授と一緒に食事に付き合っているだろう京助は、留守宅に千雪とアスカが勝手に入り込んで冷蔵庫をあさり、勝手に食べていることなど知る由もないだろう。
「何これ! パティシェリでもこんな美味しいタルトタタン、食べたことないわ!」
アスカはきれいにビーフシチューを平らげたあと、タルトタタンに取り掛かり声高に称賛した。
「確かに。あいつの作るメシは美味いな」
「え、いつもこんな美味しい食事を作ってもらってるの?」
「うん、まあ。俺、何もでけんし」
「贅沢!」
腹ごしらえをして、美味しいお茶を飲んだ後、とりあえず使った食器を食洗機に放り込み、リビングのソファで二人はしばしまったりとしていた。
七時を過ぎた頃、携帯で強盗殺人犯が捕まったという記事を読んだ千雪は、テレビをつけた。
「一昨日、大田区東蒲田二丁目のスーパー『ナムコ』に押し入り、従業員の○○さんをナイフで殺害後、現金一千万円を奪って逃走していた○○容疑者が先ほど逮捕され……」
ちょうどニュースの時間帯で、大きく報道されているこの事件が、さっき渋谷が取り込み中だった案件だろうと推測できた。
「どうしよう、うち、荒らされてたら」
報道を見て、急に怖くなったのかアスカがボソリと言った。
「そやった。うちの人、今日は帰ってきいへんのやったな?」
「うん、みんな帰る時はあたしに連絡くれるし」
「せえけど、あんな広いうちに今夜一人で帰るとこやったん?」
「昔から慣れてるし……」
アスカの声が段々小さくなる。
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