メリーゴーランド131

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「ほな、とりあえず、上のオフィス行こか。さっきの男ら戻ってくるか知れんし」
 今度は千雪がアスカの腕を引いて階段を昇って行った。
「あら、お忘れ物?」
 ドアを開けると鈴木さんが千雪を見て聞いた。
「いや、ちょうど下の通りで、彼女がどうも男に追われてるみたいなんで」
 工藤も電話を切って立ち上がり、千雪と一緒に入ってきたアスカを見た。
「お前確か、モデルだったか? 追われてるってどうしたんだ?」
 訝し気に工藤はアスカを見た。
「わっかんないわよ、私にも。ここ数日、何かつけられてるような気がしてたんだけど、ずっとマネージャーの常田さんが一緒だったから。それが今日、常田さんが別の子の方へ行っちゃったから、私一人でタクシーで動いてたの」
 アスカは勝気そうな目で工藤を睨むように言った。
「六本木のスタジオ出て、タクシーなかなか拾えなくて歩いてたらずっとあいつらがつけてきてて、走り出したらあいつらも走ってくるからやっぱりって。何が何だかさっぱりわかんない!」
 それでもアスカは少し涙目になって唇を噛む。
「家の人に迎えに来てもらおか?」
 千雪が聞くと、アスカは首を横に振った。
「ダメ! うち、今、誰もいないから。パパとママはずっと京都だし、おじい様はスケッチ旅行に行っちゃってるし」
「ほな、事務所の人に」
「ダメ!」
 アスカはきっと千雪を見つめ、「何だか、事務所の関係みたいな気がするんだもん」と言う。
「どういうことだ? オペラだろ? 事務所は」
 オペラコーポレーションは中堅どころの芸能プロダクションだが、主にモデルを大勢抱えていた。
「だって、事務所の誰かが関係してるみたいな気がするんだもん」
「何か、確証があるんか?」
 千雪が尋ねた。
 だがアスカは首を横に振り、「何となく」と言う。
「でも絶対、事務所の誰か、なのよ!」
 話していることはちぐはぐに聞こえるが、千雪はわかるような気がした。
「けど、ここにずっといるわけにもいかんし、タクシー呼んで……」
「いや! タクシーは怖いわ!」

 


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