最初にアスカを安全な場所に送り届けてから、車を置いてあるパーキングに千雪を連れて行く予定だった。
京助のマンションに着くと、エントランスで渋谷は車を停め、後ろからついてきた所轄の刑事に何やら説明をしていた。
アスカと千雪は車を降りて、何ごとかと険しい顔をしたジョージに事情を話し、中に入ろうとしたその時だ、アスカが背後から来た男に腕を引っ張られて悲鳴を上げた。
「アスカさん!」
千雪はすぐに追いついてアスカの腕を掴んだ。
小柄な男が何か喚いたが、アジア系の言葉で意味がわからなかった。
さらに男はポケットからナイフを取り出して、千雪の前でやたらめったら振りかざした。
男のナイフが空を切って千雪の横を襲ってきた時、千雪はすかさず足を引っ掛けて男を転がした。
その隙にアスカを思い切り引っ張り込んだ。
だがすぐさま、男が振り下ろしたナイフが千雪の腕を掠った。
スパッとジャケットが切れた。
その間ほんの一、二分だったろうか、すぐに刑事たちが追いついたため、男は逃げ出した。
「大丈夫か? 追え!」
渋谷が怒鳴ると、二人の刑事は渋谷とともに男を追った。
「アスカさん、平気か?」
「うん……。大丈夫……」
呆然としたアスカは、粗い息のまま答えた。
千雪はアスカを抱えたまま、マンションへと戻り始めた。
「逃げられた。車種とナンバーは控えたが」
渋谷たちが戻ってくる足音にもアスカがびくついた。
「アジア系だと思いますけど、中国のどこかか」
「なるほど、そういう連中が結構入って来てるからな。金で動くだけだから、野蛮な奴らだ」
マンションのエントランスまで戻ると、その明るさに千雪は少しほっとした。
「きゃあ!」
唐突にアスカが叫ぶので、今度は何ごとだと千雪は身構えた。
「腕!」
はたと腕を見ると血が滴り落ちている。
「千雪くん! 救急車!」
これには渋谷の方が慌てて歩み寄った。
「いや、大丈夫ですて、これしき」
「大丈夫なわけがないだろう!」
「ほな、加賀さんとこ、お願いします」
加賀というのは、以前にもちょっと怪我をした時に渋谷に連れて行ってもらった曰く付きの医者だ。
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