雑誌の取材は他にもオファーがあるらしいが、受けたのは佐久間の彼女が編集部にいる月間トランタンのみだ。
一応今のところ、オファーは工藤のところで止まっている。
ただ、アスカが言ったように、工藤は大々的に映画のプロモーションを繰り広げているというし、本当は千雪にも他の取材を受けさせたいのかも知れない。
だがこれ以上はカンベンと思った時、携帯が鳴った。
「はい、お疲れ様です。え?」
渋谷からだった。
実は今朝からアスカの質問攻めにあって困っているという。
「あの人小林千雪なんでしょ? 何であんな変装してるのよ? しかもこないだ私、ファンだからってサインもらったのに、知らないふりして、ひどすぎない? ちょっと連絡先知ってるんだったら教えて!」
千雪の怪我にパニクった渋谷がうっかり「千雪くん」と呼ぶのを聞いてしまったアスカが、携帯に何度も電話をしてくるのだという。
ああ、メンドイ!
「しっかりしてくださいよ、個人のプライバシーに関する質問には答えられないて、言うたってくださいよ」
「まあ、そうなんだが、しつこくて……」
「渋谷さん、きれいな女性には弱いですもんね」
渋谷に押し付けた形になったことなど棚に上げて、千雪は言った。
「そんなことは………」
「ちゃっちゃか犯人つかまえて、アスカさん帰してしまえばええんやないですか?」
「ああ、そうなんだが、そう簡単にも……あ、何か動きがあったようだ、また」
携帯が切れると、確かに何とか組が関係しているとなると慎重にならざるを得ないだろうと推測し、千雪も渋谷に多少同情した。
「アスカさんて、まさか中川アスカ?」
途端、向かいに座る佐久間が聞いてくる。
どうしてこいつはこういう勘だけはいいんだ。
「刑事さんのマル秘事項や」
立て続けにまた携帯が鳴る。
「おう、お疲れ」
研二の声を聞くと、自然、心が上向きになる。
「ああ、ほんまに? ほな、ゆっくりしよや。京助が連れてってくれる言うてるし、体育会系やからそういう時頼りになるで」
先日打診していた翌週末の温泉行きの件で、行けそうだと言ってきた。
三田村からはとっくにハイテンションでOKをもらっている。
桐島とモトサヤな話をきっちり聞かされそうだ。
「京助先輩とどこか行かはるんでっか?」
「ああ、ダチらと一緒にどこぞに連れてってくれるらしい」
「ええ、ええなあ、俺も行ったらあきまへんか?」
冗談やない。
せっかく研二とゆっくりでけるってのに。
「言い出しっぺは京助やから俺に言われても知らん」
そっけない返事をして千雪は立ち上がった。
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