メリーゴーランド145

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 両親に話して来てもらえばいいのに、と千雪は思うのだが、アスカに連絡を取るのは遠慮したいところだ。
 ひとまず一件落着か、などと思いつつ食べ終えた千雪の携帯がまた鳴った。
「工藤さん?」
 また映画のことで取材を受けろというような話だろうかと電話に出た千雪は、突拍子もない話を聞かされることになった。
「はあ? アスカさんが売り込み?」
 工藤の話によると、出がけにアスカがやって来て、えらい剣幕で小林千雪の連絡先を教えろと工藤に詰め寄ったという。
 工藤がそれについては社外秘だし、これから出かけると言ってオフィスを出たのだが、「待たせていただきます」とばかり、昼前にオフィスに戻るとアスカが工藤を待ち構えていた。
 そして何を言い出すかと思えば、教えてくれないのなら、青山プロダクションに入れろと言い出した。
 副社長とアリシアが捕まったものの、事務所の社長は寝耳に水、他のタレントも清廉潔白で、アスカにとっても何も問題はないはずだったのだが、やはりあの事務所にいると事件のことを思い出すし、移籍させろというのだ。
「そうすれば、小林千雪と会えるし、原作のドラマとかにも出してもらえるでしょ」
 どちらかというと事件の話よりも小林千雪が関係していることが理由らしい。
 しかもちょうどそこへ小野万里子と菊池が戻って来て、アスカの話を聞くと、万里子はアスカの肩を持って、「ぜひうちに来たらいいよ」などとと言い出した。
「どうしてくれるんだ、センセ」
「そんなこと俺に言われたかて」
 アスカは確かにマネージャーには恵まれていないらしかったが。
 青山プロダクションの人手不足は未だ解消されていない上、タレントを一人預かるというのはおそらく大変なことではないかと、千雪は一応工藤の苦労を思いやった。
 思いやったが、千雪に何ができるわけもないのだ。
 中川アスカの移籍がマスコミに取り上げられたのは、それから数日後のことだった。
 中川アスカはモデルとして活躍していた成長株で、CMもローカルだが数本出ており、最近はドラマのちょい役にも挑戦して人気も上々、これが結構業界内では評価されていたようだ。
 工藤もそこのところを鑑みてのことだったのだろうが、この電撃移籍が何とかなったのは、やはり事務所の副社長とモデルの不祥事や反社会的勢力との繋がりが取り沙汰されたことがあげられるだろう。
 さらに他にも事務所を抜けたモデルが数名いたこともある。


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