メリーゴーランド146

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 もちろんオペラコーポレーション社長としてはこれからという時のアスカの移籍など青天の霹靂で、アスカの代理人として小田弁護士が出向いた時は、相手にもしないくらいな態度だった。
 しかし曲がりなりにも社長となれば、刑事事件にも発展した副社長の行状を知らなかったでは済まされない。
 しかもアスカのマネージャーが別のモデルについていた時、アスカは一人でスタジオから帰る途中に暴漢につけ狙われたことを小田が突っ込むと、さすがに形勢は事務所サイドには不利となった。
 実際のところ、アスカの我儘ともいえるこの移籍の件を、突っ込めるところは突っ込んで、うまくまとめろという工藤の横暴な依頼をうまく波風を極力小さくして収めたのは、ひとえに小田の手腕としか言いようがない。
 アスカが事件に巻き込まれて被害にあい、精神的ストレスを被った云々を持ち出して、結局のところまだ三月まで残る契約については、決まっている仕事はきっちり遂行させることを条件に、アスカの移籍を社長にうまく承諾させたのである。
 ただし、その間、マネージャーとして青山プロダクション所属の秋山がつくことも条件に盛り込まれている。
 秋山は最近入社したという元エリート商社マンで、工藤は今後アスカと組ませることにしたらしい。
 小田が調べさせたところ、アスカのマネージャーだった田代という男はアスカの想像通り、もう一人の担当モデルとできていて、アスカの仕事に対してはいい加減さが目立っていた。
 秋山は三月までオペラコーポレーションに出向という形でアスカのマネジメントを担当するわけである。
 三月でオペラコーポレーションとの契約が切れれば、アスカは晴れて青山プロダクション所属タレントとして活動を続けていくことになる。
「参ったな………」
 ただし、アスカは相変わらず小林千雪と会わせろと、ことあるごとに言ってくると工藤からは連絡を受けていた。
 そのうちにな、と工藤は適当にあしらっているようだが、いずれどこかで会うことになるだろう。
「何か用がある時は、アスカさんがいてへん時にしてください」
 一応、工藤に念を押したが、はたして、だ。
 一方温泉旅行の件では、その日のうちに辻からも千雪の携帯に電話が入り、温泉、ただならいくらでも行くで、と上機嫌だ。
 研二と三田村と辻、何だか面白い取り合わせだが、千雪は楽しみだった。

 


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