「今日も京助先輩、忙しんでっか?」
佐久間は千雪の弁当を羨まし気に見やる。
「そやろ」
ざま見ろとばかりに美味そうに千雪は弁当を口に運ぶ。
「週末の温泉旅行、他に誰が行かはるんです?」
「やから俺のダチやいうてるやろ」
「て、こないだ一緒やった大きい人らでっか?」
「せや。もう一人でかいやつも混じるし」
「何? 週末の温泉旅行って」
佐久間と千雪の会話に速水が侵入した。
「ずるいんでっせ、先輩ら、週末、京助先輩が温泉旅行つれてってくれはるらしいんです」
「ほう? どこへ?」
「やから京助に聞いてください」
速水と佐久間のお陰でせっかくの弁当もおちおち味わっていられない。
千雪は眉根を寄せた。
まさか速水さんまで一緒に行くとか言わへんよな?
冗談やないで。
ちょっと嫌な予感がしたが、まさか、と千雪は余計なことを考えるのをやめた。
金曜の夜、七時過ぎに辻がバイクで千雪のアパートまでやってきた。
三田村と研二はそれぞれのマンションの前で拾っていくことになっていた。
「バックパック一つ?」
「十分やろ?」
「お菓子とか詰め込まんでええんか?」
そういう千雪もリュック一つなのを見て、フン、と辻が鼻で笑う。
「温泉って、どこやね?」
「軽井沢。京助の別荘、温泉引いてるんやて」
「は!」
そこへ京助がBMWのグランツアラーでやってきた。
七人乗りで、ステーションワゴンともミニバンともいわれるが、とりあえず大の男五人でも何とか乗れる空間だ。
「まさかまた買うたんやないやろな?」
新車を見て降りたった京助に、千雪が聞いた。
「買うかよ、兄貴に借りてきたんだよ」
収納スペースには大きな保冷庫がドンと載っている。
「何でっか? でかい箱」
「美味くて安い食料」
辻の疑問に京助が即座に答える。
「京助、部活の合宿やないんやから」
「心配するな。料理担当は俺だ。酒類は現地調達だぞ」
「そらもう!」
辻が張り切って答えた。
千雪が辻の横に乗り込むと、京助は車を出した。
「いっちゃん後ろは荷物の横やから、席はじゃんけんで決めるか?」
「よっしゃ」
楽し気に笑う千雪をバックミラーで見て、京助は鼻で笑う。
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