「もう、時効やろ? 俺ら大人ンなってんし」
三田村の科白に、千雪は表情を険しくした。
しかも三田村だけではなく研二もその裏の話を知っているような口ぶりだ。
「何や、その裏の話て!」
千雪は声をあげた。
「ほんまの話、山下先輩は千雪の思うとるような人やない」
「どういうこっちゃ?」
剣呑な眼差しで千雪は三田村を睨み付けた。
「森田て、隣のクラスにおったやつ覚えとおるか?」
「森田? ああ、一緒に剣道部入ったけど一学期途中で退部したやつ?」
千雪はそういう生徒がいたことを思い出した。
ちょっと気弱そうだったが、一緒に入った時は張り切っていたので、急に辞めた時は少し千雪もガッカリしたのだ。
「あいつ、生徒会で書記やっとったんや。たまたま、お前の話になって」
三田村は千雪を見た。
「実はえらいことを聞いてもうて、もう部にいられんよになってしもたんやて」
「どういうこっちゃ? えらいことて何やね?」
食って掛かるように千雪は三田村に聞いた。
「一年の時、剣道部の副部長やった小倉ていたやろ?」
その名前を聞いた時、千雪はあまり思い出したくない記憶が蘇った。
そのことは誰にも話してはいない。
研二にもだ。
それに既に解決済みだったことのはずだったからだ。
「ああ、いたな。ちょっとイケメンで女にもてとった、でかいやつ」
千雪は少し茶化して言った。
「そいつがなんやね?」
「そいつ、お前に告って撃沈したんやろ?」
ふうっと千雪はため息を吐く。
「何でお前、そんなん知ってんね?」
「祇園高のCIAともいわれたこの三田村に知らん情報なんてあれへん。とにかくや、そいつが他の三年の連中とお前に対する悪だくみしとるのを、森田が聞いてしもたんやて」
「悪だくみてなんや?! 俺何も聞いとらんぞ!」
「小倉、よほどお前にフラれたんを根にもっとったんやな、他の三年のやつらと部活終わってシャワーん時、お前のこといてこます算段しとったて」
千雪の予感は当たった。
「お前、風呂でちょっと握ったくらいのこっちゃないで? それを聞いてもた森田は震え上がって、部長の山下に相談したらしい」
「え…………」
千雪は驚いた。
何を三田村が言いたいのかがわかったからだ。
「ほな、俺だけ居残りとかって」
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