「うう、せえけど、来月のパリとかあんまり行きとうない」
「ああ、小夜子さんの結婚式やろ? なんでや、めでたいのに」
研二が聞き返した。
「研二はあの婚約パーティのし烈さを知らへんからな」
「そうや、披露宴の菓子、大丈夫なんか?」
三田村が研二に聞いた。
「おう、うちの店、総動員や」
「その前に、お前ンとこの支店オープンやろ? オープニングパーティやるんか?」
「それ、芝さんに言われて、俺もあんまり気が進まんけど、やらんわけにもいかんしな」
研二が言った。
「俺も行ってええ?」
「ええやろ。招待状送っとくわ」
三田村は、やった、と喜んでいる。
千雪も目で訴えると、「わかった、お前にも出しとく。辻はどないする?」と辻を振り返る。
「そらもう、営業にもつながるか知れんし」
辻と笑い合う研二は明るい。
ふと千雪は思った。
江美子のことがなければ、心底喜べる話なのだが、それでも、研二は何か吹っ切れたように陰りがなかった。
一日目の夜は、和やかに穏やかに過ぎて行った。
それぞれが心地よい疲労感で、眠りについた。
旋風の前触れは、翌朝、京助お手製のオムレツやミネストローネスープやチーズトーストなどホテル顔負けの朝食を済ませて、みんなで食器を片付けている時だった。
玄関のドアフォンが鳴った。
「どなたかまだいらっしゃるんですか?」
公一が京助に確認したが、「いや、そんな予定はないが」と言うので、
公一はビデオを見ながら対応した。
「あ、はい、今門開けます」
あたふたと玄関に向かう公一に、「誰だ?」と京助が聞いた。
「速水さんです」
「速水だと?!」
京助の顔が険しくなる。
千雪も眉根を寄せた。
「何で速水さんが来はるん?」
「知るか!」
イライラしながら京助は公一の後に続く。
「速水て、桐島に振られた心理学のセンセか?」
三田村が千雪に確かめた。
「せやけど、何で、あの人が来るんや!」
千雪もイラついて声を上げる。
「お前んちに電話したら、藤原さんがここにいるって教えてくれたぜ」
車が玄関に横付けされた音がして、やがてやってきた速水は京助に向ってへらっと笑った。
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