メリーゴーランド176

back  next  top  Novels


「芸妓って何よ!」
 さらに聞き捨てならないとばかりにアスカが突っ込みを入れる。
「いや、同級生で芸妓やってる子がいてて、御座敷終わってそのまま飲み会来たよって、菊ちゃん」
「ほう、さすが京都らしい話だな」
 速水も面白がって聞いている。
 そこへ、千雪を伴って研二が戻ってきた。
 千雪は黙って席について、冷めたポワレの続きを食べ始めた。
 京助も三田村も辻も二人に何も聞かず、食事を続けた。
 さすがに速水も口を噤んでいた。
 やがて表面をこんがり熱く焼いたクレームブリュレが配られた。
 クレームブリュレはシェフにデザートのリクエストを聞かれた京助が、千雪の好物を頼んだのだ。
「美味しい!」
 アスカが言った。
「ほんまや、これ美味いわ」
 千雪も美味しいもののお陰で少しだけ心が浮上する。
コーヒーの苦みと酸味が微妙に相まって、クレームブリュレの美味しさを引き立てる。
京助は何も言わず、千雪の反応に苦笑しながらとっとと食べ終えた。
「食後のお祈りはいいわけ?」
 アスカが京助に言った。
「んなもん、形だけだからいんだよ」
「ほんと、京助って、いい加減!」
 二人のようすを見ながら、千雪はまた、やっぱ、この二人って実はええ相性なんやない? などと考えていた。
 ざっくばらんにこんな風に話せる相手の方が、京助にはええ思う。
 まあ、理香さんもそうらしいけど、どっちかいうとアスカさんの方がお勧めやな。
 ぼんやりそんなことを考えていた千雪は、皆が食事を終えて席を立っても、ぐずぐずと座っていた。
 つきあってくれた研二も「スタッフもそろそろ片付けたいんちゃうか?」と千雪を促した。
「ああ、せやな」
「小林先生」
ようやく緩慢に立ち上がった千雪は、秋山に声をかけられた。
「ご挨拶するタイミングを計りかねておりましたが、青山プロダクションの秋山と申します。今後ともどうぞよろしくお願いいたします」
 丁寧に名刺を渡された千雪は、「ああ、どうもよろしゅうお願いします」と頭を下げる。
「せえけど、先生はカンベンしてください。アスカさんみたいにユキでも何でもええですけど」
 またすこぶるエリート然とした社員が入ったもんやな。
 なんや、わけありやったっけ。
「では、小林さんくらいでよろしいでしょうか」


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
いつもありがとうございます