「芸妓って何よ!」
さらに聞き捨てならないとばかりにアスカが突っ込みを入れる。
「いや、同級生で芸妓やってる子がいてて、御座敷終わってそのまま飲み会来たよって、菊ちゃん」
「ほう、さすが京都らしい話だな」
速水も面白がって聞いている。
そこへ、千雪を伴って研二が戻ってきた。
千雪は黙って席について、冷めたポワレの続きを食べ始めた。
京助も三田村も辻も二人に何も聞かず、食事を続けた。
さすがに速水も口を噤んでいた。
やがて表面をこんがり熱く焼いたクレームブリュレが配られた。
クレームブリュレはシェフにデザートのリクエストを聞かれた京助が、千雪の好物を頼んだのだ。
「美味しい!」
アスカが言った。
「ほんまや、これ美味いわ」
千雪も美味しいもののお陰で少しだけ心が浮上する。
コーヒーの苦みと酸味が微妙に相まって、クレームブリュレの美味しさを引き立てる。
京助は何も言わず、千雪の反応に苦笑しながらとっとと食べ終えた。
「食後のお祈りはいいわけ?」
アスカが京助に言った。
「んなもん、形だけだからいんだよ」
「ほんと、京助って、いい加減!」
二人のようすを見ながら、千雪はまた、やっぱ、この二人って実はええ相性なんやない? などと考えていた。
ざっくばらんにこんな風に話せる相手の方が、京助にはええ思う。
まあ、理香さんもそうらしいけど、どっちかいうとアスカさんの方がお勧めやな。
ぼんやりそんなことを考えていた千雪は、皆が食事を終えて席を立っても、ぐずぐずと座っていた。
つきあってくれた研二も「スタッフもそろそろ片付けたいんちゃうか?」と千雪を促した。
「ああ、せやな」
「小林先生」
ようやく緩慢に立ち上がった千雪は、秋山に声をかけられた。
「ご挨拶するタイミングを計りかねておりましたが、青山プロダクションの秋山と申します。今後ともどうぞよろしくお願いいたします」
丁寧に名刺を渡された千雪は、「ああ、どうもよろしゅうお願いします」と頭を下げる。
「せえけど、先生はカンベンしてください。アスカさんみたいにユキでも何でもええですけど」
またすこぶるエリート然とした社員が入ったもんやな。
なんや、わけありやったっけ。
「では、小林さんくらいでよろしいでしょうか」
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