「実家の家事やってるばあさんを迎えに行ったら、二人しか乗れない車なんか、買い物にも役に立たないとか文句言われたんで、ワゴン探してたら、ダチがこれなら四人乗れるし、バゲージも余裕があるとかいうからこれも買ったんだよ」
「はあ、あんまり車に執着ないとか?」
京助の言葉にやけに三田村が突っ込む。
「いやまあ、もっとゆったり乗れる方がいいだろ」
「そんなら、あんな車買うたりせんで、そういうやつ買うたらええやろ。俺のアパートの駐車場なんかに置いといて、盗難にでも合うたって知らんからな」
聞いていた千雪はイラついて文句を言った。
正月に誕生日プレゼントと称して車を千雪の実家の前に横付けされた。
千雪としては手放しで喜べるものではない。
「へえ、ポルシェがプレゼントですか?」
ニヤニヤと聞いた三田村も、正月、ポルシェの新車を羨まし気に見た記憶がある。
「だから俺も使ってるだろ。保険は入ってる」
広尾のマンションに着くと、ほなまた、おおきに、と愛想よく笑い、三田村はマンションに入っていく。
「あいつこそ、ただのリーマンじゃないだろ? このマンションのペントハウスとか言ってなかったか?」
十階建ての高級マンションで、コンシェルジュなどもいる。
「ああ、西日本建設て、でかい会社の社長の息子や。今東京支社にいる。親があの界隈の出身やから、あいつ俺らと同じ公立の中学高校行ってたんや」
「へえ」
たいして興味もなさげに返事をした京助は車を首都高に乗せ、やがて千雪のアパートの駐車場に車を滑り込ませた。
一台分は京助が自分の車用に、もう一つのスペースには正月に買った車がカバーがかかった状態で停まっている。
車の会社にいる友人との付き合いもあるのだろうが、車にかかる費用はかなりなものになるのではないだろうかと千雪も改めて思うが、考えるだけ面倒なので聞いたこともないし、京助も言わない。
それがわかったところで何も変わらないからだ。
当たり前のように京助は千雪について部屋に入る。
京助の部屋は西麻布にあり、中はメゾネットになっている高級マンションの部類だろうが、兄の紫紀が所有者で、もともと東洋グループの海外からの社員を受け入れている。
コンシェルジュの代わりに英語を話すガードマンがいるが、戸数は少ないし、表札などもない。
いずれにしても向こうの部屋の方が広いし使い勝手もよさそうなのに、わざわざこの一DKの千雪の部屋にもう何年も入り浸って、半同棲状態が続いている。
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