ただし、公一が持ってきたウエアにあれこれケチをつけるので決めるのに時間がかかり、着替えてコートに戻ってきた頃には、秋山と公一ペアが千雪と研二ペアに勝って一ゲームが終わっていた。
ジャッジはゲームをしていないメンツが務めていたのだが、千雪と研二はボールにおいつくものの、打ち返すとホームランになったり、ネットになったりと、テニスで鍛えられてきた秋山に打ち負かされた感じだ。
加えて、千雪のプレーの際、観戦組から声高な応援が入るのが、千雪の気をそいでいる。
「ちょっと、ユキ、何やってんのよ、野球じゃないんだから! ああ、惜しい! あと二歩速く走ってよ! ボールはネット越えないとはいんないわよ!」
コートからベンチに戻ってきた千雪は、タオルで汗をぬぐいながら、「応援やのうてけなしてるんやし」とアスカに文句を言った。
「だって、ただ頑張ってえ、じゃ、ユキの場合奮起できないでしょ」
それを言われると正直頷かざるを得ないところもなきにしもあらずだ。
「千雪の性格ようわかってはるわ」
研二が笑う。
「勝った方にドンペリ一本進呈するわ」
千雪と研二に勝った秋山、公一ペアと三田村、速水組に勝った京助、佐久間ペアの決戦となったところで、理香が提案すると、公一と佐久間が、よっしゃあと気合を入れた。
「あら、なかなかやるじゃない公一くん」
京助のバックを返した公一を見て、理香が言った。
「だって、小さい頃から夏とかこのテニスコートで京助の相手させられてたもん。紫紀はそこそこやるんだけど、京助みたいに目の色変えたりしないし、涼は嗜む程度で京助相手しようとしないのよ」
アスカが説明すると、「え、それってずるいやん。いわばホームや。俺ら完全アウェイやんか」と千雪が初めて聞いたと、文句をたれた。
確かに秋山には及ばないが京助のプレイも昨日今日始めたものではない。
「四年も付き合ってて、ここ来たの初めて?」
アスカが千雪に聞いた。
「初めてやし、テニスやってたとかも聞いたこともないわ」
千雪はアスカが知っているらしいとわかり、その隣に座る理香を見た。
「あたしは何も言ってないわよ?」
聞かれる前に理香は首を横に振った。
「京助に聞いたのよ。でもあたしは京助なんかに負けないから」
アスカは宣言するように言った。
「へ?」
するとアスカは立ち上がり、「公一、ナイスショット!」と声を大にして叫んだ。
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