メリーゴーランド189

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「佐久間の方へ打てばいいんだって! きゃあ、ナイス!!」
 明らかに千雪に対する声援とは違うアスカの声が届いたのか、公一のショットを佐久間が抜かし、結果は秋山、公一ペアの勝利となった。
「秋山さん、ほんとにマネージャーとかでいいの? 工藤さんに演技の方、誘われなかった?」
 アスカがタオルを首に引っ掛け、ポカリスエットを飲んでいる秋山に率直に尋ねた。
「私には演技はできませんよ」
「でも、立っているだけで存在感ありそうだし」
「私は成果が目に見える形で納得できる仕事でないとダメなんです」
「なるほど、しかし、芸能プロのマネージャーより、エリート商社マンの方が似合ってる感じだけど」
 ちょっとテニスをやっただけで、ベンチで伸びていた速水が口を挟んだ。
「残念ながら会社に裏切られたので商社マンには見切りをつけたんです」
「え……それは知らぬこととはいえ失礼を」
 さすがに速水も恐縮した。
「いや、今はむしろすっきりしています。それに、工藤さんのところの仕事はやりがいがありそうです」
 うっすらと笑みを浮かべた秋山は、「京助さん、やり足りないでしょう」と京助に声をかけた。
「ですね」
 京助もやりがいがある相手が現れて満足げにコートへ戻っていく。
「うへえ、二人ともタフ過ぎる~」
 公一や佐久間がぐったりとベンチで伸びたまま二人を見送った。
「テニスもやってみるとおもろいんやな。高校の体育祭でやったきりやもんな」
 千雪がぼそぼそと呟いた。
「大学では何をやったんだ?」
 研二が聞いた。
「体操」
「体操? なんやそれ」
 研二は苦笑いする。
「跳び箱とか、鉄棒とか? 一人か二人除いて、てんで何もでけんやつばっかやったから、俺も、あのナリに合わせて、五段の跳び箱、踏切版でけっつまづいて、跳び箱の上に座ったり、鉄棒も、懸垂一回で落っこちたった」
 得意げに話す千雪に、「それこそサギやろ」と研二が笑った。
「お前、小学校の時、鉄棒で大車輪、とかってぐるぐる回っとったやろ。俺が危ないからやめやいうのに」
「ガキやったからな」
「飛び箱かて、八段くらい軽く飛んどったくせに」
 研二の話に、アスカが「あ、それ知ってる。わざとできないジジィとかに扮して、いきなり普通以上のことをやってのけるバラエティ」と得意げに言った。


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