「ええ、あるんなら、やりましょうよ、カラオケ!」
佐久間が大乗り気だ。
「しかし、割と古いぞ」
「平気ですがな、懐メロ好きやし」
京助が嫌そうに言っても佐久間と公一が既に倉庫に向っている。
「やっぱ、温泉にカラオケはつきものですやろ」
三田村も辻もやる気満々だ。
「ハイキングにテニスにカラオケ大会。健全過ぎてクソ面白くもない。ジジババの温泉旅行か」
ソファにふんぞり返った速水がブツブツと言った。
「何かこう、ミツドモエのドロドロ劇とか、熱烈なイチャイチャとかないのか。天下のイロオトコ綾小路京助ともあろうものが」
「そういうアホなセリフしか出てこないのか、既にお前のアタマはアウトだ」
「アホな、とな。千雪ちゃんの口癖すら移って、お前らは既に空気のような存在の茶飲み友達か。お前にはてんで歯が立たずにお嬢ちゃんは帰っちまうし」
フンと京助は御託を並べている速水に呆れ顔を向けて、キッチンへと向かった。
「克也こそ、人の観察ばっかしてないで、コイでもアイでもすればいいじゃない」
ゆっくりお茶を飲んでいる理香が言った。
「それはそっくりお前に返すぞ、理香」
「あたしは保養にきたんだから、ゆったりまったり、いいのよこれで」
「一気にババア度が増したな。いつもなら男どもを四、五人引き連れて練り歩く女王様のお前が」
「ババアとか、ハラスメントだから」
「お前まで千雪ちゃんの口癖が移ったか」
速水は胡乱な目つきで理香を見やる。
「心理学者のくせに言葉の使い方も知らないんだから」
案外、速水の放ったキーワードに引っかかっていたのは京助だった。
ミツドモエね。
お前はほんと、佐久間にいえねぇ鈍感男だ、克也。
キッチンに来る途中、カラオケカラオケと騒いでいた連中とは少し離れたところで、親密そうに語り合っている千雪と研二を京助はチラリと見やった。
あのやろう、こういう時だからこそだぞ、千雪をお前に返したわけじゃないからな。
いかにも平然とした大人の顔の下で、京助は千雪を研二に取られるのではないかという焦りがあった。
だが、江美子のことで心理的にダメージを受けただろう彼らに対しては強く出られない。
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