「でも、秋山さんてすごいね。この業界に入ってまだそんなに経ってないでしょ? なのに何十年も業界にいた人みたい」
「データを収集するのは得意分野ですから」
クールに言ってのける秋山に対して、アスカは信頼を置き始めていた。
「飲み過ぎないように」
ただし、何かにつけ小言を言われるのは煩いと思うのだが。
その夜の晩餐は、一人一人に牛肉のしゃぶしゃぶが用意された豪華な和食となった。
「うおお、いよいよ高級温泉旅館の装いを呈してきたやん」
食事を前に三田村が声高に感激の意を表した。
「高級旅館よりも食材は上かと存じます」
ボソリとたまたま近くに来たシェフが言った。
「へええええ」
刺身や一口鮨、鮎の塩焼き、海老しんじょ、松茸やヒラタケなどのキノコや地元の野菜をふんだんに使った椀物、吸い物、練り物、どれをとっても美味のひとことにつきる。
「豪勢な食事のあとは温泉につかって、とくればやっぱカラオケやん」
佐久間に公一、それに三田村の熱意にまけて、仕方なく京助は、ピアノが置いてある洋間へカラオケセットを運ばせた。
「カラオケ全集とかいろいろあるやん!」
大きなスピーカーをモニターにつなぎ、佐久間はマイクのテストに余念がない。
京助は三人に任せて、風呂へ向かった。
風呂には速水や辻、それに研二がいた。
「お疲れっす。カラオケ、やるんでっしゃろ?」
辻がニヤニヤと京助に聞いてきた。
「ああ、やつらがカラオケセット設置してるぜ」
「会社の保養施設にもなってる言わはりましたよね。至れり尽くせりやな」
研二が言った。
「主に東洋商事のオヤジ連中が、カラオケカラオケって騒ぐんで、数年前会社の備品として買ったんだ」
「え、そんなん、勝手に使てええんですか?」
「いいだろ。オヤジ連中もうちにあるもん、勝手に使ってるんだから。ゴルフだテニスだなんだって」
京助は渋い表情のまま、フンと笑う。
「楽しみじゃねえか。京助のがなり声が」
速水がへらへら笑いながら、湯から上がる。
「だれががなるか」
入れ違えに、カラオケセットを設置していた三人が駆け込んできた。
「いやあ、ここならどんだけ声張り上げたかて、近所迷惑とかならへんでっしゃろ」
佐久間が興奮気味に言う。
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