メリーゴーランド195

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「バカ言え、ハウスキーパーのスタッフは明日が早いからって寝てるんだぞ」
「みなさんも混ざればええのに」
 三田村が能天気なことを言う。
「そうはいかないだろ。彼らは自分の仕事に誇りを持ってるからな」
「はあ、特にあのシェフ、凄腕で何者って感じやな。昨日はフレンチで今夜は懐石風日本料理。ドクターも派遣いるんやから、派遣のシェフもいるわな」
「昔はそれこそ地方の大きなホテルのオーナーシェフだったらしい。不況のあおりで潰れて、フレンチレストランのシェフをやっていたところが、そこも潰れて流れ者になったとか言ってたぞ、志田さん」
「そらまた………」
「一つのレストランで働くより、いろんなところに行ったお陰で修業になるんだと」
「そういうもんやろか」
 話を聞いていた研二がボソリと言った。
「お前も、こっちだといろいろ修行になるんじゃねえ?」
「はあ、まだ、どないなるか、蓋を開けてみんことには……」
「そんな弱腰でどうするよ。お前、相手が怪我してたら、攻撃しねえタイプだろ?」
 すると京助の科白に同調した三田村が、「そうだぞ、たまにはお前もガツンといけガツンと!」と研二の耳元で喚く。
「煩いわ、お前」
 研二の背中を押してどうするよ。
ついお節介な発言をしてしまった京助は、己の性格に少し呆れる。
「研二、そろそろ、いくで」
 風呂から上がってそれぞれの部屋へ一旦戻って着替えてから、カラオケ会場となっている階下の洋間に向かうことになっていた。
「おう、しかし、カラオケわかっとったら、コスプレの一つや二つよういしてくるんやったのに」
 三田村が髪にガーガーとドライヤーを当てながら言った。
「せんでええ」
 研二が笑った。
「今夜も千雪はボッチ温泉なん?」
 ふと思い出すように三田村が言った。
「お前のせいやろ」
 辻がすかさず返す。
「中学の時やで? まさか今頃まで………」
 辻は何気に短パンを脱いでデニムに履き替えようとしている研二の膝下に目をやった。
「お前、墓場まで持ってくつもりか?」
「ああ?」
 研二が振り返る。
「その膝の傷。それて、あれやろ? 高二の時、千雪を襲おうとした上級生とやり合うて、刃物出してきたやつにやられた時のやろ?」
 俄かに研二の目が険しくなった。

 


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