「古い話を持ち出すな」
研二は辻の問いをきっぱりと切り捨てた。
「せえけど、インハイ出場危なかったやろ、傷のこと隠して練習しよったから」
三田村までが話を続けた。
「結果出場でけたんやから、何も問題はない」
「出場やのうて、お前は優勝候補やったやろ」
「負けたんは俺の力不足や」
「どこまでもストイックやからなあ、研二は」
三田村が変な感心の仕方をする。
「大体、辻、お前、喧嘩みよったんやろ、何でケガさせる前に加勢せんかったんや」
「俺に振る? そうかて、相手何人やったか忘れたけど、研二やったらちょろい思うて、高みの見物しとってん。ところがナイフの使い方もわからん奴がやたらめったら振り回しよって、あっと思うた時は刃先が研二の脚にあたりよったんや」
「もうええやろ。済んだ話や」
苦々しい顔で研二が言った。
「未回収のまんまでええんか? お前の人生やから、周りが何ゆうたかて、お前が決めることやけどな」
三田村がさらに研二を問い詰める。
「山下先輩のシゴキの答えは、こないだ図らずも千雪の知ることによって、面目がたったわけやし、この際、弁慶は表だけやのうて、裏でも千雪を護っとったいう……」
「やからそんな古い話持ち出して何の意味がある?」
三田村の発言に研二は声を荒げた。
「まあ、あんだけ目立つやつが、生意気に上級生に食って掛かりよったら、シメたろ思う輩もおるわな。例え上級生が完璧悪やとしてもや」
「表沙汰にならんかったんやからそれでええやろ」
「仮にや、お前が黙っとったことを第三者から千雪の耳に入ったら、どないする?」
三田村は尚も食い下がる。
「そん時はそん時やろ」
「研二が黙っとりたいわけは、要は、何でそこまでして千雪を護ったか、やろ?」
辻までが茶化し半分口を挟んだ。
「三年の、クリスマス前やったか? 千雪のおっかけやっとった桜陽女学院の子が、『いつもあなたが小林さんの傍にいるから、近づかれへん!』とかってお前に当たりちらしたやろ」
研二は三田村を振り返った。
「お前、聞いとったんか?」
「たまたまや。そんでお前は、進学先を東京から金沢に変えよった」
「勝手なこと……」
バン、とドアが開いたのはその時だ。
「ほんまなんか? 今の話」
千雪は三人を睨み付けた。
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