メリーゴーランド209

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「ええよ。どこに何時?」
 千雪は立ち上がり、電話しながらテーブルを離れた。
 それを目で追っていた京助は立ち上がった。
「だからお店は『西之屋』か……え、京助さん??」
 コンパの店の相談をしていたはずが、いきなり京助が千雪が座っていたテーブル席の方につかつかと郁のを見て、伊藤が大きな声を上げた。
 京助は意も介さず、千雪が去った方に目を向けながら佐久間に聞いた。
「あいつ、どうしたんだ? 誰から電話だ?」
「え、研二、て言うてたよって、研二さんちゃいまっか?」
 京助は険しい表情で、「研二か」と呟くと、千雪の後を追うように行ってしまった。
「どうしたのかしら? 何か急用だったのかな、京助さん」
 伊藤はそう言うと、さすがに口をへの字にしてこちらもたったか行ってしまう。
「あら、伊藤さん、待って」
 木村はそれを追って行った。
 すると速水が立ち上がって、佐久間のところまでやってきた。
「急用だったのか、か。彼女としては、自分のことを放り出して相手が、それも京助が話の途中でいなくなるとか、信じがたい出来事だったようだな」
 まるで経過観察をしていたかのように速水は言った。
「木村さんは、彼女にとっては付属品のようなもの、というか、伊藤さんは引き立て役には自分より見目が下と思っている相手を選んでいるよね」
「へ……、千雪先輩も似たようなこと言うてはったけど………」
 佐久間が難しい顔で言った。
「そして京助はいよいよ右往左往しはじめたか」
「え、何かあったんでっか?」
 目の前で千雪と京助の行動を見ていたにもかかわらず、何も理解ができていない佐久間を、速水はもはや同情を越えて呆れた顔で見た。
 やがて京助が戻ってきた。
「名探偵は?」
「見失った」
「研究室戻ったはるんちゃいまっか?」
 佐久間は確かめると言って研究室に戻っていった。
「お前、何を焦ってるんだ?」
 速水に言われて、京助は増々渋い表情になったが、何も言わずに法医学研究室がある方へと足を向けた。
 何をとかわかっていれば、焦りもしないさ。
 千雪が研二と会いに行ったということだけは確かだろう。
 ただの仲直りのためなら、どうということはないが。
 研二も千雪も、おそらく今、互いに本音を口にしようとしている。
 過去のことで済ませられないものもある。

 


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