それから間もなく、千雪はソファに凭れて眠ってしまった。
研二は毛布を持って来て千雪にかけてやる。
そんな様子を見ていた三田村が、「千雪がおるんなら、おるて言えよ」と研二に突っかかるように言った。
「お邪魔虫やんか、俺」
「何がや」
「ええ加減にせえよ、研二。千雪とモトサヤがええんやろ? お前かて」
「モトサヤとか、おかしな言い方しいなや」
研二の顔が曇る。
「お前がシングルに戻った。東京に出てきた。そしたらもう、千雪を取り戻すしかないやろ?」
「取り戻すとか、俺らはそんな」
「とろいんだよ、てめーらは! お互い好き合うとったんは、わかっとるわ」
三田村が声を上げた。
「でかい声出すな。千雪が起きるやろ」
「ほんで、今夜こそ、ちゃんと言うたんやろな?」
三田村に突っ込まれて、研二は黙る。
「言うべきこと言わんから、こないなとこまで来てもうたんやで?」
「今の千雪には今の千雪のおる場所がある。俺が今さら何を言え、言うんや」
「京助さんがおるから? そんでもきっちり言うべきやろ。言わな、前に進まれへん。じれったすぎやろ!」
三田村の言葉の意味は研二にもよくわかっていた。
昔の思いを引きずったまま生きてきたから、結局周りを巻き込んでしまった。
真由子を苦しめたのは自分だ。
研二の中にある千雪への思いが、真由子を追い詰めてしまった。
さっき、千雪の口から、好きだったと、聞かされた時、我を忘れて千雪を抱きしめていた。
危うく己の業で千雪をめちゃくちゃにしてしまうところだった。
千雪………。
千雪は好きやったと言うたんや。
俺は………、俺はずっとお前が好きなんや。
さっきも、軽井沢でも、時折、狂いそうにお前を好きやと……。
やから、お前に会うのを避けてきた。
去年の春、お前に久しぶりに会うた時、子どもが生まれるいうのに、そんなこともどこかへ行ってしもて、京助さんに、思わずタンカきってもうた。
いや、あれがほんまの俺なんやと、思い知らされた。
お前のためやったら、何もかも捨てる覚悟はある。
ハ………、けど、今さらや。
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