メリーゴーランド216

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「菊子が言うとった。お前のオフクロさん、お前が好きな相手が誰なんか知っとるて」
 その言葉に、研二は三田村を睨み付けた。
「俺を睨むんはお門違いやで。誰もオフクロさんに何も言うてない。ただ、菊子がオフクロさんとお前がこっち来てもうて寂しいてな話しよった時、研二は私らにはええ子過ぎた、これからは自分の思うように生きてくれたらええんやて。真由子さん一時、誰彼かまわず、お前の相手が誰なんか聞いて回って、オフクロさんにも必死になって聞きよったらしいな。せえけどお前が決して口にせえへんのに、オフクロさん何も言われへんかったて」
 研二は三田村から視線を外し、直も苦い顔で宙を睨んでいる。
「お前ら二人のこと、それこそ口にはせえへんかったけど、好き合うとるて思うとったもんはいくらもおるで。このご時世や。俺や菊子や桐島や江美子ですら、お前らの間には入って行かれへんて思うとったくらいや」
 三田村の話を苦笑しながら研二は聞いていた。
 だとすれば母にはわかっていたのかも知れない。
 だが、真由子を連れて帰った時は両親ともに喜んだし、真由子も初めは両親ともうまくやってくれて、子供ができたことは誰もが喜んだはずだった。
 だが、いつ頃からか、真由子のようすが少しずつ不安定になっていった。
 妊娠初期だからだろうと医者は言ったが、何がきっかけだったのかはわからない。
 あの頃の真由子を思い出すと、本当に精神的におかしくなったかと思ったくらいで、しかもその必死なようすに研二は胸をグサグサと刺されるかのような思いがした。
 研二の昔のアルバムまでひっくり返していたが、ずっとそばにいたのは千雪くらいだし、千雪だとは思いもよらなかったようだ。
 その頃にはもう、真由子とはダメだと思い始めていた。
 子どもらにも、真由子にも可哀そうなことをした。
 全て自分が招いたことなのだと、己の罪深さを思い知った。
 実家に帰って二人目を出産し、京都に戻ってきた真由子は、少しは落ち着いたようだった。
 ただ、別れたいと言われた時、やはりと研二は納得した。
 もう真由子を離してやらなければと、そう思った。
 研二が東京に店を出すことを両親が簡単に許すとは思わなかった。
 だが、母親はそんな思いで研二を送り出したのかと、今さらながらに研二は申し訳ない思いがした。

 


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