メリーゴーランド217

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「お前は優しいやつや。千雪のために陰で怪我しようが、千雪が暴走したりせえへんように黙っとったんやろ? お前は優しいから、お前が千雪の傍におったら、江美子が近づかれへんて、そない思うてお前は黙って身を引いたんや」
「身を引くとか、そんな大げさなもんやないわ」
 研二は断言的な三田村の言い方を否定した。
「せや。優しいことが必ずしも最善とは限らん。お前がそこで選んだ決断が、周りを巻きこんで巡り巡って今があるわけや」
「俺は、千雪とどうこうしよう思てこっちに来たわけやない。千雪が幸せでいてくれるんやったら、傍らで見守れたらええ」
「ウソ言え!」
 三田村がきっぱり言った。
「何がウソや」
「千雪を取り戻したくないわけないやろが」
 研二は眉を顰め、ややあってから言った。
「そうやとしてもや。幸せでいる千雪を俺の勝手に付き合わせてええわけがない」
「さあ、千雪が京助さんとうまくいってるかどうかはわかれへんで」
 怪訝な目を三田村に向け、研二は毛布を被って寝息を立てている千雪を振り返った。
「どういうことや?」
「やから、小夜子さんと京助さんの兄貴の結婚が決まったやろ。次は京助さんの番やて、あの界隈では注目が集まってるいうこっちゃ。でかいうちに生まれたら、そういう面倒なこともあるし、第一あの人、騒がれる要素あり過ぎやろ? これからどうなるかわかれへんわ。多分、そこいらへんのことで、千雪も京助さんに対して不安要素を持っとるわけや」
「千雪がそないなこと言うたんか?」
「前にちらっとな。まあ、千雪を取り戻すんなら今やで?」
 険しい表情のまま、研二はしばし口を噤む。
 それこそ芸能人でもないのに女性絡みの話が取り沙汰されるような京助に対して、何で千雪はあんな男とと思っていたのは確かだ。
 だが、去年の春、研二に対して先に牽制のような言葉をぶつけてきたのは京助だ。
 以来、江美子の葬儀の時も千雪や自分らの後ろで寄り添ってくれていたし、先日の旅行にしても千雪だけというより、自分らのことまで気にかけて、むしろマスコミの評とは違う技量すら感じられた。
 速水や勝手についてきたらしい日向野に対しての言動からも逆に厳しすぎるくらいで、竹を割ったような性格なのは伝わってきた。
 だからこそ、千雪から逃げたような自分がこの人にはかなうはずがないと思ったのだ。
 やはり、今更なのだ。
 研二は自嘲した。

 


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