不当なリストラにあい、工藤の大学の同期で、会社の顧問弁護士である小田に依頼して訴訟を起こして勝訴した菊池だが、結局前のブラック企業には戻りたくもなく、小田の紹介で青山プロダクションに入った。
その割とすぐに、最初はパートとして働いていた鈴木さんが正規の社員となっていた。
菊池の仕事は万里子のマネジメントが主だが、現在八面六臂どころではなく動き詰めの工藤をサポートもしている。
今はスポンサーとの打ち合わせから戻ったところだった。
「お疲れ様」
万里子が鈴木さんより早くコーヒーを持って来て渡した。
「ありがとう。いや、何か電車が人身事故とかでね、止まってて、焦った~」
「まあ、ほんとですの?」
「何か、世知辛いご時世よね~」
菊池と鈴木と万里子が三人で語らっていると、「井戸端会議はそのくらいでこっちにこい」とやっと電話を終えた工藤がソファの横に立っていた。
「インタビューは主演の多喜川誠、志村、万里子との三パターンで、それぞれのスケジュールに合わせて、上の部屋でやる」
「え、三回もやるとか聞いてへんけど?」
千雪はインタビューの説明をする工藤に口を挟んだ。
「そのくらい融通を利かせろ。お前のスケジュールと合わせておく」
工藤が眉を顰めて言い返す。
「お前のメイクは万里子がやってくれる。インタビュアーは小杉がやるが、撮影スタッフはうちと付き合いのある連中だ」
どうやらいろいろ千雪のために配慮してくれているらしいことを聞くと、千雪もそれ以上文句も言えなくなる。
小杉は志村のマネージャーだが、もともと二人は同じ劇団員で、志村にテレビの仕事をやらないかと誘いをかけたのは工藤とはキー局にいた頃からの腐れ縁のディレクター下柳だ。
下柳から志村を紹介され、万里子に引き続き俳優を引き受けた工藤だが、マネージャーが足りないというと、小杉が手を挙げた。
俳優としての自分の力に限界を感じていた小杉は、志村の演者としての才能をかっていて、サポートしたいと引き受けてくれた。
細かい打ち合わせをした後、俳優陣は撮影に戻って行ったが、千雪は雑誌のインタビューの依頼について工藤に打診された。
「英文社って、前にもやった?」
「ああ、『トランタン』って雑誌だ」
一件、熱心な編集がいると言われてきくと、やはりと千雪は渋い表情をした。
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