京助も千雪も慌ただしい一週間を過ごし、小夜子と紫紀の挙式に間に合うように、JALのビジネスクラスに乗ったのは金曜の午前十一時のことだった。
まとめて迎えに行くという紫紀からの連絡を受けて、京助、千雪、そして綾小路長樹が通路を挟んで乗り合わせたが、「ビジネスなんか取らなくたってエコノミーで充分だろ」と京助は文句を言ったが、「個室っぽいし、寝て行けるからありがたいやんか」と千雪はゆったりしたシートを歓迎した。
「いやあ、間に合った」
息を切らして駆け込んできた長樹は、がっちりした体躯を座席に預けて言った。
「四時間のオペでさ。こりゃ諦めざるを得ないかとか思った」
「お疲れ。こっちもご遺体を二つさばいてきたとこだ」
千雪は両側からそんな科白を聞かされて思わず耳を塞ぎたくなった。
「席変わりまひょか? 相手はちごても、同じ医者同士の話あるんやないですか?」
長樹はそれを聞くと、豪快に笑った。
二人とも確かに無精髭も剃る時間もなかったらしい。
「わかった。そういう話、千雪くんは嫌いなんだ」
「血みるんも苦手やし」
「それでよく殺人事件とか書いてるよね?」
「なるべくスプラッタ系の話は避けてますよって」
「お前はやわすぎるだけだろ」
京助が左隣から口を挟んだ。
「えっと、長樹さんは、京助とはまた従兄にあたらはるんですか?」
するりと話題を変えて千雪は尋ねた。
「いや、もっと遠いんじゃないか? 俺の曽祖父が京助くんの曽祖父、郁麻呂とかって人の弟で、俺のオヤジと京助くんのオヤジさんがまた従兄だろ? 確か」
「へえ、そうなんや」
「何だかややこしいんだよ。祖父同士も兄弟いねえし、近しい付き合いしてきたのは長樹さんとこくらいだろ」
「縁戚関連でいうと遠いけど、まあ、本家の結婚式だからな、顔を出さないわけにはいかないとか、オヤジが言い張るし。オヤジも俺も一人っ子だから、確かに近い縁戚ってそういないな」
「本家とかって、面倒そうやなあ」
千雪はボソリと言う。
「何かほら、ミステリーのネタにはなりそうだろ?」
長樹は気さくで大らかな性格らしく、そんなことを言ってまた笑った。
「そういや、原の方は、小夜子の母方の縁戚っていねえわけ?」
思い出したように京助が聞いた。
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