メリーゴーランド224

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「いはるけど、伯母さんとこも複雑らしいで。何でも、伯母さんのお母さんは後妻さんで早うに亡くなりはって、兄姉は前妻さんの子どもで年も離れとるし、伯母さんが原にきてからはあんまり交流もなくなったとか、小夜ねえが言うとった」
 千雪はそのことで小夜子が怒っていたのを思い出した。
「それが、小夜ねえが紫紀さんと婚約が決まって、婚約パーティやった頃に、急に伯母さんの実家の高木さんから連絡が入って、もうずっと原のうちからはお歳暮やのなんやの送ったりしてもうんともすんとも言うてこなかったのに、手の平返したようにゴマスリしてきよったて、小夜ねえ怒っとった」
「フン、そういう輩は多い。うちは藤原がそういうとこきっちり対応してくれるからな」
「やからどうしても俺が行くしかないことになってしもて」
「だから姉弟みたいなもんなんだからしゃあないだろ」
「千雪くんはあれか? 小夜子さんを紫紀さんに取られるみたいでいやだとか」
 二人の会話を聞いていた長樹がニヤニヤと口を挟む。
「そんな可愛い時期はとうに過ぎてますわ。いや、あの婚約パーティみたいなん、もう嫌になりますわ。当の小夜ねえもウンザリしてたし」
「ああ、俺も苦手だな。まあ、大きいとこの宿命ってやつじゃないか? あれ、そういえば、今日はメガネしてないんだね」
 長樹は今気づいたらしく、不思議そうに千雪を見た。
「何、ひょっとして、あのごつい眼鏡で名探偵を演出してるとか? 何だか別人だねえ」
 顔の造作などにさほど興味がない御仁に、千雪は好感を持った。
「実はそうなんです。金田一耕助を目指したんですけど、着物に袴はちょっと動きづらいし」
 すると長樹はまた豪快に笑い、「いいねえ、そうか、これでベストセラー作家と親戚になるわけだ、かなり遠いけどね。病院で自慢してやろう」などと言う。
「忙しないばっかで専門書以外読むゆとりがなくて、今までは読んでなかったけど、これから読んでみることにするよ」
「はあ、ありがとうございます。三流探偵小説ですけどね」
 長樹はまた大いに笑うと、しばらくして寝息を立て始めた。
 隣を見ると京助も既に目を閉じている。
「二人ともよほど疲れてるんやな。俺も寝よ」
 食事以外、三人ともほとんど寝ているうちに機はシャルルドゴール空港に着陸していた。
「いやあ、久々よく寝たな」
 それがパリに降り立った長樹の言葉だった。

 


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