心の中で千雪は思ったものの、今ここで訂正することでもない。
部屋には涼と大がいて、あちこち遊びに行ったことなどを京助と千雪に口々に話してくれるのだが、眠ったとはいえ、疲れが抜けきったわけもなく、二人は適当に相槌を打つ。
「二人とも疲労の極致って感じだな」
お茶をもらってソファに座りこむ二人を見て、紫紀が苦笑する。
「まあな。徹夜続きで機内では眠ったはずなんだが、物見遊山よりホテルでずっと寝ていたいくらいだ」
京助がボソリと言う。
「京にい、オヤジクサ」
生意気に大が声を大に言ってくれる。
「正直俺もですわ」
千雪も生あくびをかみ殺した。
「お疲れ様。明日の式までゆっくりするといいよ」
紫紀に労われて、京助も千雪も紫紀の部屋を辞したが、「俺、ちょっと小夜ねえの顔見てくるわ」と小夜子の部屋を訪ねた。
「あら、お疲れ様! 来られないんじゃないかと心配してたのよ」
小夜子は思った以上に元気だった。
伯父と伯母は慣れない街を歩いて疲れたといいつつも、千雪によく来てくれたと喜んだ。
京助に話すまで伯母のことはさほど気にも留めないでいたのだが、実家とは縁が薄いだけに、小夜子は無論のこと、千雪のことも大事に思ってくれているようだ。
「親友の美佐子ちゃんに久々にあったら、もう話が止まらなくなっちゃって」
どちらかというと、小夜子はパリに来て元気になったというべきか、結婚してこちらに住んでいるという友人と久しぶりにパリの街を歩いたのだと、楽し気に話す。
「留学してた時に借りていたお部屋があるとこまで行ってみたのよ。もう全然変わってなくって! それが紫紀さんの家も案外近かったのよ。紫紀さんがパリ支社っていうのも、ちょうどよかったかも知れないわね」
これからのパリ在住も不安より楽しみの方が勝っているようだ。
「まあ、ちょうどよかっただなんて」
伯母が呆れて小夜子を見たが、小夜子はなんのそのだ。
「ただ大ちゃんがね、やっぱり東京の学校を離れるのが寂しいみたいなのよ」
「結局、どうすることになったん?」
「パリで私たちと暮らすことに決めたのよ。これも冒険、ですって」
「そらよかった」
「奈良のお母さまにも話したら、快く承諾してくださったらしいわ」
紫紀の前妻で大の母親は大学教授で奈良に住んでいる。
これまでも月に一度は会いに行っていた大だが、周りが大人ばかりの中で育ったからか、体格だけでなく雰囲気も大人びている。
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