「こっちにどのくらいいることになるん?」
「どうかしら。ちょくちょく帰るつもりだけど」
千雪も少しは寂しい気がするのだから、伯父や伯母はもっと寂しくなるだろうと思われた。
両家で話し合った結果、小夜子が綾小路の籍に入ることにはなったのだが、実家の大和屋の仕事も引き続きやっていくというのが前提だ。
結婚とか、家同士の問題もあるから、やっぱ面倒やな。
千雪は家同士とかうっちゃって、大和屋から母の夏緒を連れて駆け落ち同然に京都に連れてきたという父親をふと思い出した。
ぱっとみ冴えない学者だったが、いざとなると行動力の人だったんだな、などと千雪は改めて思う。
「ああ、でもウエディングドレスなんて、二度と着るとは思わなかったのに、やっぱ、嫌だわ」
どうやら小夜子は元気なだけではないらしかった。
この期に及んでそんなことを言い出した小夜子を伯母が宥めている。
「ええやん。二度も着られると思えば」
そう言って千雪は部屋を出た。
千雪としても二度も小夜子のウエディングドレスを見るとは思わなかったが、二度目の花嫁は一段とゴージャスで美しかった。
その日はまるで小夜子のために晴れ渡ったかのようで、美しい花嫁を地球上の全てが讃えているかのような式になった。
高く青い空へと荘厳なウエディングベルが鳴り響いた。
紫紀はそんな美しい花嫁の手を取りつつ誇らしげな表情で笑っていた。
出会いやきっかけは何だったにせよ、この二人はカップルになるべくしてなったかのようだ、千雪はそんな気がした。
縁とは不思議なものだ。
式に出席した親族や東洋商事パリ支社の面々で、その後はパーティになった。
「あの頃は本当にごめんなさい。小林さんのご迷惑も考えてなくて」
何年ぶりかで再会した久世薫子は、千雪にそう言って謝った。
「いやもう、昔の話やから」
素直に謝られると、そう言わないではいられないだろう。
「でも小林さん、やっぱり変装してたんでしょ? も、全然変わってない! すんごくきれい! 今お付き合いしてらっしゃる方いらっしゃるんですか?」
しかし彼女もやはり全く変わっていなかった。
「おるよ」
千雪はすかさず言った。
「ええ、どんな方? 東京にいらっしゃるの?」
「いい加減にしろ! 今謝ったんじゃなかったのか」
見かねた京助が口を挟むと、「京助さんには聞いてませんから!」と怯む様子もない。
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