メリーゴーランド230

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 最近青山プロダクションに入った、中川アスカのマネージャー秋山がまさにそういった被害を受けた例だ。
 会社の中で使い込みの濡れ衣を着せられ、真犯人が捕まり容疑は晴れたものの、フィアンセには逃げられ、家族には容疑だけで家の名前に泥を塗ったと言われ、秋山は家とも会社とも縁を切ったと聞いている。
 長樹の父親綱俊は、当時京助が付き合っていた少女の父親が東洋商事傘下の会社の社員だったため、京助とは釣り合わないからという理由で父親を海外支社に飛ばし、京助は少女と連絡もできなくなった。
当然京助は理不尽さに怒り、高校の時に会社まで押しかけて長樹の父親を殴ったという。
「いや、京助くん、やるな、と思ったよ」
 長樹にこそっと聞くとそう言って笑った。
「オヤジはほんと俗物だからね。俺なんかも見事にオヤジの期待を裏切って医者になったけど、まあ、結局綾小路グループの病院に収まっちゃったからな」
 どうやら長樹と京助は綾小路の異端児ということらしい。
 軽井沢ではつい、日向野に対してえらそうなことを言った千雪だが、もし二人の関係がばれたりした日には、京助の性格上長樹の父親を殴った時のように、暴露してしまう可能性は大いにある。
 しかもマスコミに追いかけられることは容易に想像がつく。
 うざったいことこの上ない。
 それに、と顔を上げた千雪の視界に入ったのは、トレーに牛丼の大盛を置いた京助と何か話しながらこちらにやってくるミスT大だ。
 おそらく京助はおにぎりをとっくに食べてしまい、足りなくなったのだろうことは察しが付く。
 伊藤は京助と話すのが嬉しそうだ。
 周囲の男どもに羨望の眼差しを向けられている二人の後ろから木村もパスタを乗せたトレーを手についてくる。
 客観的に言えば二人は似合いのカップルというところだろう。
 そして京助にはこれから先もそう言った相手がわんさか現れること必須だ。
 その中に、俺とのことを解消したい思うような相手が出てくる可能性はいくらもあるんちゃうのんか?
 グタグタと千雪がそんなことを考えていた時、ポケットで携帯が鳴った。
「ああ、研二、うん、土曜日やろ? 行けるで。ああ、小夜ねえ、行く言うてたけど、わかった」
「何かええことあったんでっか?」
 千雪がニコニコと応対してたからだろう、佐久間が聞いた。
「研二の店のオープニング、今度の土曜日なんや」


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