「あ、俺も行ってええです?」
「ええけど………理沙子さんは連れてくるなよ? 俺、まんまで行くし」
「そっか。取材してもらうんがええ思うたんやけど」
佐久間の言葉に、千雪は困惑した。
確かに佐久間の言う通り、大手の女性誌編集者である理沙子に取材をしてもらえば、大きな宣伝になるわけだが、千雪としては研二の店だというのに、こんなおかしな仮装をしていきたくはないというのが本音なのだ。
「せえけどアポなしでは取材なんかでけんで? まず芝さんにアポ取ってみんと。芝さんそういうとこ厳しいらしいし」
「そらきっちりアポ取ってもろて。ああ、わかった、先輩の考えとること。パリの結婚式なんか、先輩の姿が見えん言うても何とかすまされたけどて思うてはるんでっしゃろ」
変なところに気がつくやつや。
「せえけど、世に知られたベストセラー作家のご友人、言うんでも宣伝になりますやろ?」
理沙子には二度ほど取材を受けている。
佐久間の言うように、自分の名前で少しでも宣伝になるのであれば、とは千雪も思わないでもないのだが。
「まあ、それなら話だけでもしたったら?」
仕方がない、と千雪は覚悟を決めた。
小夜子は行くと言っていたが、パリから帰ってくるのは明後日だ。
もう一度確かめる必要はあるが、パリでの結婚式が話題になった小夜子が出席して、披露宴に使う菓子をやることになっているとそれを取材してもらえれば、それこそ宣伝になるはずだ。
芝は派手に騒ぐようなことは好きではないらしいが、おそらく研二にとっては一世一代の勝負というところなのではないか。
ぼおっとしているうちに、佐久間は理沙子に連絡を取っていた。
「理沙子も芝ビルのことは取材したいと思ってたみたいで、研二さんの店のこと話したら、早速アポとってみる言うてました」
「わかった。決まったら知らせてや」
「もちろん。先輩、そんでもジャージはあきまへんで」
このやろ、変に先読みしよって。
「わかっとるわ、そんなこと。研二の大事な時に」
千雪はつんけんと言い放った。
芝への取材のアポは、研二が了承すればよしということで案外すぐに快諾を得たらしく、研二も異存はないという返事をもらったと、その日のうちに佐久間が知らせてきた。
「せやから、俺は物書きの小林いうことで行くし、うん、俺も二度雑誌の取材受けてるんや」
千雪はその夜、研二に連絡を入れると、研二は「気ぃ使わせてしもてすまんな」と言う。
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