メリーゴーランド235

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 この場で彼らと研二のことを知っているのは理沙子だけで、彼女は彼らにいくつか質問したあと、「皆さん、黒岩さんとはいいお仲間とお聞きしましたが」と京助にも分け隔てなく聞いた。
 理沙子は研二の家族のことなどには触れず、高校時代のエピソードや、京都の本店での菓子作りの話などを取材すると、きっちりと礼を言った。
「佐久間の彼女? 羨ましすぎや」
 辻がその後姿を見送りつつぼやいた。
「ほんまや、大人美人な見かけを裏切る理性派と見た」
 三田村も頷く。
「佐久間が彼女に言うてたんかもしれんけど、過去二回取材受けたけど、俺のコスプレのことには一切触れんで、ちゃんと作品のことを聞いてくれたからな」
 千雪が補足するように言った。
「女性誌やけど読者も落ち着いた年齢層やし、研二の菓子のことを誠実に伝えてくれる思う」
「派手な宣伝よりも着実じゃねぇか?」
 京助も頷いた。
「俺に、くだらねぇ質問しなかったのは彼女くらいだ」
「へえ」
「あんな彼女がいるのに、何だって佐久間のやつはああ、軽佻浮薄なんだ?」
 京助の科白に千雪らも笑う。
「きっと、彼女がどれだけのもんか、わかってへんのんちがいます?」
 三田村が感慨深げに言った。
「お前もそれ、あらためて思い知ったもんな」
 千雪が三田村を揶揄する。
 三田村の付き合っている桐島も同級生だが、世界を闊歩するピアニストだ。
「うるさいわ」
 あちこちで客に掴まって、丁寧に答えていた研二は、ようやく同級生らのところにやってきた。
「ほんまに来てくれておおきに。こない凄い人やとは思わんかったわ」
「テレビの取材まで入っとるし、明日は一躍有名人やで」
 辻が研二の肩をバシッと叩く。
「せやな。菊ちゃん、来られんくて悔しがっとったけど、テレビで全国ネットちゃう? さっきの」
 三田村が興奮気味に言った。
「あーあ、江美子もおったらめっちゃ喜んだのにな」
 そして溜息交じりに続けた。
「あほやな。どっかから見とるに決まっとるやろ! 情けないこと言うたら怒るで。あいつ結構怒ると怖いよって」
 辻が三田村をどやしつけた。
 千雪は一瞬言葉を失くしていた。
 そうやってまた江美子がいないことを確認していかねばならないのだ。


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