「千雪」
研二が千雪の表情を見て声をかけた。
「あ、あ、京都のおっちゃんらもあの辺のみんなも明日は泣いて喜ぶんちゃう?」
「せやな、酒屋のおっちゃんなんかからしたら、俺なんかまだ、やさかのぼん、やもんな」
「図体はるかに超えとるのにな」
千雪の言葉に研二が苦笑する。
パーティは盛況に終わり、翌日はテレビの朝の情報番組で、新しい芝ビルと研二の店が紹介されると、案の定、京都の菊子が早速研二だけでなく、千雪や三田村のラインに大騒ぎで連絡してきた。
「いつでもこっち来たらええやん。みんなで研二の店押し掛けよ」
菊子が、ええなあ、うちも行きたかった、を繰り返すので、千雪はそう返した。
まあ、研二、次は小夜ねえらの披露宴で大変やろけどなあ。
その披露宴も、一週間後に迫っていた。
「ここんとこ、一週間ごとにイベント続きや」
ボソリと口にした千雪の独り言を聞きつけて、「ああ、いよいよでっか、綾小路さんとこの披露宴」と佐久間が言った。
昨夜の京助は疲れていたようだが、ちゃんと昼用のサンドイッチが冷蔵庫に作り置きしてあった。
北風が吹き抜ける外は見るからに寒そうで、学食の隅のテーブルを陣取っていた。
「昨日の研二さんの店のオープニングパーティにも綾小路はんと小夜子さんバッチシ映ってましたで」
「ああ。理沙子さんも俺らにまで取材してくれたけど、みんなどんな記事になるんか楽しみにしてるらしい」
「それはもう、きっちり書かはりまっせ、彼女」
「余計なこと聞かはらんし、プロに徹した編集さんやな」
「それはもう!」
「あんな彼女がおるのに、なんでお前は軽佻浮薄なんだって、京助が不思議がってたわ」
「えええ? それはないですやろ」
「俺に言うても、京助やから」
フン、と千雪は知らん顔だ。
週末の披露宴、早いとこ終わってほしいわ。
お仕着せを着て大人数の披露宴席に座ることを考えるだけでも千雪にはウンザリだった。
とはいえ、大変なのは研二の方なのだが、千雪はやきもきする以外に何もしてやれない。
何でも、芝氏が昨日のパーティをやったイベントフロアーを貸し切りにして、披露宴の菓子作りに使わせてもらえることになったという。
前日には京都の店を閉めて、両親や職人数名が助っ人にやってくる予定だ。
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