メリーゴーランド242

back  next  top  Novels


「小夜ねえ、何をアホなこと言うてんね。俺らのことなんか気にせんかてええよ」
「そういうわけにはいかないわ」
 小夜子はきっぱりと言い切った。 
「はっきり言って、私にとっては綾小路さんより千雪ちゃんの方が大切だわ」
 千雪は大きく息を吐いた。
「小夜ねえ。それは有難いけど、俺のことで小夜ねえの幸せを壊すようなこと簡単に言わんでほしいわ」
「千雪ちゃん、これは私の考え方の問題でもあるの。譲れないこともあるわ」
 千雪はまたふうと息を吐き、「わかった」と一応は頷いた。
 小夜子は一見して京助が前に言ったように、ドンくさいところもあるし、ただおっとりしたお嬢様のように思われがちだが、考え方ははっきりしているし、意思も強い。
小夜子の考えを改めさせることは難しいかも知れないが、それより千雪の中では、やっぱりな、という思いが具体的に大きくなった気がした。
 既定路線やな。
 まあ、とにかく、小夜ねえの披露宴が終わってからやな。
 小夜子にまで自分のことに巻き込みたくはないと、千雪は心の中で自分に言い聞かせた。
 
  

 都内老舗ホテルで行われた紫紀と小夜子の披露宴は華やか過ぎず、重すぎず、バカ高いケーキも二人の馴れ初めや生い立ちを追う感動の動画上映も余興も両親への花束贈呈も何もなかったが、落ち着いた雰囲気の中、祝辞が粛々と続いた。
 唯一、モーツァルトの弦楽四重奏とピアニストのショパンが招待客を楽しませた。
 紫紀も小夜子も終始穏やかに、招待客に感謝の意を表し、小夜子は最後までオフホワイトのシンプルなドレスだったが、美しさは際立って見えた。
 三田村や速水、理香も顔を見せ、工藤やアスカと祖父の中川幾馬も彼らと同じテーブルについていた。
 千雪は原の伯父、伯母と綾小路の親戚で、昔京助が殴ったという綱俊とその息子長樹がいた。
 運よく千雪の隣に長樹が座ったので、彼の話で千雪は退屈せずにすんだ。
 京助は大長と佐保子、弟の涼、それに紫紀の息子の大と同じテーブルにいた。
 研二も菓子の作者として紫紀から紹介され、拍手喝さいを受けた。
 招待客にも研二の創作菓子の美しさは好評だった。
それだけでこの披露宴に出席した甲斐があったと千雪は思った。
 披露宴が終わり、二次会の予定もなかったので、招待客が帰ると、紫紀と小夜子は親戚や原の伯父伯母や千雪らをお茶に誘ったが、千雪は遠慮して「実は締め切りに追われてまして」と適当な理由をつけるとホテルを出た。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
いつもありがとうございます