メリーゴーランド246

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「おかしいぞ、お前」
「何がです?」
「全く平気そうじゃない」
 クソ、何でわかるんや、この人。
 千雪は工藤をまっすぐ見返した。
「全く書けなくなりました」
 つい、ぶちまけていた。
「ドラマの話に水を差すようですけど、俺、放映される頃には物書きじゃなくなってる可能性もありますよ?」
 フン、と工藤は笑った。
「スランプか? まあ、お前の場合、いろいろあったからな。どこかで影響が出てくるもんだ」
 眉間に皴を寄せながら、千雪は工藤を見た。
 確かに自分よりは長い時間、生きているのだろうけど。
 そういえばこの人は大切な人を理不尽な理由で亡くしているのだ。
「もし全く書けへんようになったら、他の作家が取って代わるだけやて、編集には言われました」
「編集とはうまくいってないのか?」
「さあ、わかりません。初めての編集やし。俺のこと変態や思うてるらしうて、アパートに来ても上がったこともあれへんし、必要最低限のことを電話でやり取りするだけやったし。俺も踏み込んでほしうないから、携帯嫌いやから持ってないてウソついとったし、信じとったんちゃいますか?」
 千雪は自嘲した。
「そりゃまた、変なのにあたっちまったな」
「いや、いくらでも替えはいる、いうやつでしょ。どのみち三流探偵小説やし」
 投げやりな言い方をする千雪に、工藤は苦笑いする。
「そこがダメでも、お前に書かせたいってとこはあるから安心しろ。お前が書けるようになったら紹介する。俺のところで止めているが、こいつならって編集がいる。少なくとも今の編集よりはましだ。まあ、しばらく休んだらいいさ」
 思ってもみなかった言葉を聞いて、千雪は驚いた。
「また俺を使うて、ドラマや映画創る気でいるからですやろ」
「そりゃそうだ」
 工藤は言った。
「せめて携帯のやり取りくらいできる編集の方がいいんじゃないのか? 意思の疎通もできない相手とは仕事なんかできないぞ」
「そういうもんですか?」
「そういうもんだ」
 工藤はフンと笑い、煙草を咥えた。
 すると匂いは違うのに、千雪の脳裏に京助の顔が浮かぶ。
 最近かなり研究室の方も忙しいらしい。
「副流煙、こっちによこさんとってください」
 工藤はフン、と笑って煙草を灰皿でもみ消した。

 


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