千雪がわからないことを知っているからか、ドラマのキャストについて一人ひとり説明してくれた。
一通り撮影のスケジュールについても説明したところで、また電話が鳴り、鈴木さんが工藤を呼んだ。
「お疲れのご様子ですね」
お茶のお代わりを持って来てくれた鈴木さんが優しく微笑んだ。
「おおきに。まあ、いつものことですよって」
このオフィスでこんな風にしばしの間でもまったりできるとか、初めて工藤に会った頃は考えもつかなかった。
人との出会いとは面白いものだ。
出会いと言えば、アスカを今度のドラマでちょっと使ってみると工藤は言っていた。
披露宴の時も、目が合ったアスカが何か言いたげな顔をしていたが、結局話すことはなかった。
千雪の小説のファンだからとこの会社に移籍したとか、あり得ないと思ったが。
えらい行動力や。
むしろ感心してしまう。
その時、携帯が鳴った。
「ああ、え………、まあ、ええよ」
三田村からだった。
帰りに研二の店に寄らないかというので、少し躊躇したものの、千雪は行くことにした。
コートを羽織り、オフィスを出たところで雨が降り始めた。
この、クソ寒いのに!
千雪は雨に八つ当たりしながら地下鉄への階段を降りた。
地下鉄日比谷駅から地下道を芝ビルに向かって歩く千雪は、通り過ぎる特に女性の目がいちいち千雪に向けられるのすら気づかないくらいぼんやりしていた。
芝ビル入り口の階段を上がり、エレベーターで四階に上がる。
一階から会社帰りだろう人々がどっと乗ってきて、千雪は奥へと押しやられた。
四階でエレベーターが停まると、慌てて人を掻き分けるようにしておりる。
ふう、と一つ溜息をついて、千雪は甘味処『やさか』を目指す。
一方は壁、一方はガラス張りになっていて、店内はテーブルとテーブルの間隔が若干広い作りになっている。
四人がけのテーブルは大人の男が二人並んでも窮屈ではない。
テーブルや椅子とも黒で統一され、壁も腰の高さまでは黒の板張り、その上はぬくもりを感じさせるオフホワイトの塗壁になっている。
十あるテーブルはほぼ満席で、その合間をぬってスタイリッシュなスタッフが颯爽と動いていた。
待ち合わせだと告げると、テーブルに案内され、千雪はコートを脱いだ。
メニューを広げて、あんみつでも食べようかと見ていると、新しいランチメニューに気づいた。
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