三田村は腹が減っていたのか、あんみつをぺろりと平らげた。
コーヒーを飲んでいた千雪は研二がお茶と菓子をトレーに乗せて真由子の席に向かうのを見た。
研二が真由子の向かいに座り、二人は何か話し始めた。
研二は背を向けているのでわからなかったが、真由子は少し微笑んでいた。
「腹減ってんのんやろ? そろそろ出るか?」
「待てよ、まだコーヒー飲んでへん」
そこへコーヒーが運ばれた。
「どこ行く?」
「うーん、最近見つけた小料理屋、行こか」
「小料理屋? 渋いやん」
「上司が連れてってくれたんや」
「ええよ、行こ」
千雪は立ち上がったコートを掴むとたったか出て行く。
「ちょ、待てよ、コーヒー……」
三田村は慌ててコーヒーをがぶ飲みすると、レシートを掴んで立ち上がった。
その時、テーブルの端に携帯を見つけて、「おい、千雪! 携帯、忘れとるぞ!」と声を上げた。
振り返った千雪は三田村から携帯を受け取ろうとして、不意にじっとこちらを見つめる真由子と目が合った気がした。
だがすぐに視線を外し、店を出て行く。
「はいはい、俺が支払いますからね」
三田村は先に店を出た千雪の後を追うようにして、レジで立ちどまった。
「ありがとうございました」
女性スタッフのきりっとした笑顔に送られて、三田村も店を出た。
すると、「三田村、千雪」と追いかけてきた研二に二人は振り返った。
「悪い、彼女、いきなり来よって」
「いいって。彼女元気になったんちゃうのんか? お子達連れてよう来はったな」
「ああ、彼女の実家に電話入れたら、驚いてはって。まあ、今夜は東京駅のホテル取ってあるいうし」
三田村と研二が話しているうち、千雪はぼんやり突っ立っていた。
「テレビで店のこと見て、来てみたかったらしうて」
「やっぱ、すごいな、テレビ。そのうち日本中から押し寄せるで」
「アホか。まあ、そんなわけで、またの機会に、すまんな、千雪も」
研二がようやく千雪を見た。
「いや。せっかくやし、ゆっくり東京見物でも連れてったらええんちゃう?」
千雪がそう言うと、研二は何故か眉を顰め、「ほならな、また連絡する」と言い、店に戻っていった。
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