「ほな、行こか。電車たるいし、タクるか」
三田村は陽気そうに千雪を促した。
小料理屋は恵比寿にあり、三田村のマンションからも歩いて行ける距離にあった。
串揚げがメインで、三田村はピーマンから玉ねぎ、牛肉からチョリソと、片っ端からオーダーし、生ビールで乾杯する。
串揚げは自家製のたれがまた美味くて、千雪も健啖ぶりを発揮し、ビールをゴクゴクと飲んだ。
三田村はジョッキのビールが終わると、辛口の日本酒をオーダーした。
これも口当たりがよく、キュウリや湯豆腐などとよく合って、千雪もわりと飲んだ。
さらにオーダーした熱燗をくいくいと飲む。
空になったぐい飲みにまた酒を注ごうとした千雪を、その徳利をつまんで三田村は止めた。
「もう、あかんやろ。真っ赤やで?」
「しゃあないやろ、色が白いよって赤うなるんや」
「もう、やめとき」
三田村は徳利を取り上げて、自分のぐい飲みに注ぐ。
「ずるいやん、お前」
「俺はかなり強い。お前は飲むと寝てまうくちやろ、もうあかん」
「ケチの三田村」
三田村は千雪をじっと見つめ、「もう、かなり酔うとるな?」と呟いた。
「せっかくええ気分で飲んどったのに」
目がすわっているのを見て、三田村はぐい飲みの酒を飲み干すと、「出るか」と立ち上がる。
「何でやね、まだ飲めるわ」
千雪は三田村の腕を掴んで駄々こねのように言った。
「こら、あかんわ」
三田村はとりあえず店から千雪を連れ出すと、ちょうどタクシーが通りかかったので、千雪を座席に押し込んだ。
「すんません、近いんやけど、お釣りいらへんから頼んます」
そう断ると、運転手も苦笑いして、「大丈夫ですか? 彼女さん」と聞いてくる。
「ええ、もう眠りかけとるし」
一瞬、またか、とは思ったものの、反論する気力もなく三田村は答えた。
店ではポツリポツリと主に三田村が研二のことや真由子のことを口にしたが、千雪の方は、うんうんと頷くくらいで、ほとんどその話題には乗らず、これ美味い、これも旨い、とばかりひたすら食べて飲んでいた。
「ほら、しっかりせえよ」
自分のマンションに連れてくるしかなかった三田村は、やっとのことで、千雪をエレベーターに乗せ、部屋まで連れ込んだ。
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