「汗だくやで」
いくら彼女さん、などと間違われても、そこそこタッパもあるしかも酔っ払いの男をそう簡単に連れ歩けるものではない。
「やっぱ、ガタイがでかいやつらが有利やんか」
千雪のコートだけ脱がせてソファに寝かせようとして一緒に倒れ込む。
「クッソ! こら! 千雪! キスするぞ! 襲うぞ! 俺がお前のこと好きやったん、忘れたんか!」
三田村が大きな声で喚いても、目を覚ます様子はない。
「ったく、しゃあねえなあ」
三田村は一つ溜息をつくと、スーツを脱ぎ捨てて風呂に向かった。
シャワーを浴びて出てきた三田村はスエットの上下を着ると、冷蔵庫からポカリスエットのボトルを取り出してゴクゴク飲んだ。
と、むくりと千雪が起き上ったのが見えた。
「おい、大丈夫か?」
千雪は答えもせず、トイレに直行した。
「あーあ、だから言うたやんか」
しばらくしてトイレから出てきた千雪は、ソファまで行ってまた倒れ込んだ。
「ほれ、飲み」
三田村はポカリスエットのボトルを千雪の頬につけた。
目を開けた千雪はようやく起き上がり、ボトルを取ると黙ってゴクゴクと飲んだ。
「強うもないのにバカスカ飲むからやで」
「うるさいわ。美味かったんやから、ええんや」
「戻したら台無しやろが」
「うっさい、寝る」
千雪はボトルをテーブルの上に置いてソファの上で丸まった。
「寒い!」
何やら取り付く島もない雰囲気の千雪から、仕方なく離れようとした三田村は溜息を落とした。
「へえへえ、我儘王子め!」
三田村は毛布を取ってくると、千雪に掛けた。
寝息を立ててもう眠っているようだったので、三田村は灯りを消した。
翌朝、千雪が目を覚ましたのは明るくなりかけのまだ早い時間だった。
身体を起こした千雪は、そこがどこなのか把握するまでしばし時間を要した。
「せや、夕べ三田村と飲んだんやったな………」
千雪は呟いた。
カーテンの隙間から差し込んでいる光が眩しくて目を眇める。
髪に酒や料理の匂いがしみ込んでいる気がして、千雪はバスルームに向かった。
湯をかぶって千雪は頭を振った。
酔いが醒めたらまた昨日の研二と真由子が脳裏に蘇った。
店を出る時、視線が合った真由子の目が。
何や、あれ………。
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