何で来るんや。
金沢におったらよかったのに。
そんなことを思ってから、千雪は自嘲した。
アホか。
どうにもなれへんのに。
そのあたりにあったタオルで頭をガシガシ拭きながらバスタオルを腰に巻いた千雪がバスルームから出ると、パジャマ姿の三田村が立っていた。
「大丈夫か?」
「……腹、減った」
三田村は苦笑した。
「へえへえ」
キッチンに行くと、冷蔵庫から卵とベーコンを取り出し、さほど使ってもいないフライパンをIHヒーターの上に乗せた。
桐島が部屋に来た時に使ったきりのオリーブオイルをフライパンにたらし、卵を割り入れ、ベーコンを並べた。
コーヒーメーカーに挽いたコーヒーをセットし、これだけは毎朝食べているパンをオーブントースターに放り込む。
ドライヤーを使っている音がして、千雪がセーターとジーンズに着替えてバスルームから出てくるのが見えた。
「大学行くんやろ? 何時に出る?」
「まだ一時間は平気やろ」
ピアノの上に置いてあるデジタルの時計は七時を示していた。
「できたよってこっち来いや」
キッチンからカウンター式のテーブルにパンと玉子ベーコンを乗せた皿を置き、コーヒーの入ったマグカップを持って三田村は千雪の横に座った。
「食わんの?」
フォークを持ったまま皿を見つめている千雪の顔を三田村はのぞき込む。
「ヨーグルトがない」
三田村はガクッと項垂れる。
「こんの、我儘王子が!」
「今さらやろ」
「残念ながら、うちにはヨーグルトなんかあれへん!」
「京助は欠かしたことないのに」
三田村はまた溜息をついた。
「なるほど。軽井沢でも必ず朝ヨーグルトがあったのは、お前のためか」
京助がシェフに指示していたに違いない。
「ま、ええわ。これからは自分でなんとかせんと」
千雪はぽつりと言った。
「ナニソレ?」
卵を頬張った三田村は千雪を見た。
「京助から独り立ちする計画が俺の中で進んでんのや」
「は? え、それって、まさか、京助さんと別れるいうことか?」
「……まあ、そうとも言う」
千雪はパンを齧る。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
