メリーゴーランド254

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「バターやない………」
「ええ加減にせいや、お前、どんだけ甘やかされとんのんや! パンにつけるのなんかバターでもマーガリンでも変われへんやろが!」
「全然味がちゃう」
 千雪は一口齧っただけで、卵をフォークですくう。
「ほんでお前、いよいよ、研二とより戻すことにしたわけや?」
「俺と研二に戻すよりなんかあれへんし、それこそ研二は真由子さんとより戻してんやろが」
 千雪は機械的に卵やベーコンを口に運び、コーヒーを飲んだ。
「何言うてんや、真由子さんはほんまに突然来ただけやろが。研二はもう彼女とより戻す気ぃはあれへんよ」
「そんなん、お前にわかれへんやろ」
「わかるさ」
 三田村は笑った。
「あいつがお前を好きやったことは、俺やのうても江美子も菊子も桐島も知っとる」
 千雪はため息をついた。
「仮にそうやったとしてもや、一緒に東京の大学行く言うてたのに、いきなり金沢や。ほんで、真由子さんと会うて卒業と同時に結婚したんやで? 俺は後になって江美ちゃんに聞くまで知らんかった」
 卵をつつきながら、不貞腐れたように言う千雪に、「それは!」と三田村は声を上げた。
「あいつはお前の前で、結婚なんかでけへんかったんや。お前は怒ったけど、あいつはお前を護るためやったら、なんぼでも喧嘩くらいしよったわ」
 三田村はコーヒーをぐびりと飲む。
「ただ、女学院の子にお前がいるよって千雪に近づけんとか言われた時、研二は、江美子のことを思うて、自分が身を引いたんや。ほんまはお前と一緒にこっち出てくるつもりやってんで?」
 千雪は三田村を軽く睨む。
「やからなんでお前にわかるんや」
「研二のヤツから聞き出したに決まっとるやろ。お前ら、何年もずっと一緒にいて何で既成事実とか、ってか、何でお前らちゃんと好きやって伝えとらんのんや! 意思の疎通がまるでないやんか!」
「うるさいわ!」
 以心伝心や思うとったんは俺だけか。
 ま、そうやな。
 やっぱ言葉にせんとあかんかったんや。
 まあ、今さらやな。
 千雪はコーヒーを飲み終えると、立ち上がった。
「せえけど、金沢行った研二は電話もメールもそっけない思うとったらそのうち無視やった。次の春にはもう真由子さんと付き合うとったやろ」
「次の春て、その限定的な言い方は何や」
 三田村の突っ込みに千雪は一瞬口を噤む。

 


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