「もともと日本で生まれたので、私より日本語はうまいです」
照れ笑いをして九条は品よく紅茶を飲んだ。
「ところで、ちょっと千雪さんにお聞きしたいことがあるんですが」
居住まいを正して、九条が千雪に向き直った。
「実は先日、京助さんにご紹介したお嬢さんなんですが」
ああ、その話か。
千雪はここでもか、と内心溜息をついた。
「京助さんには、そういう話ならと即お断りされましてね、お嬢さん、日向野奈々子さんとおっしゃるんですが、その通り伝えたんですが、奈々子さんとしては不服らしく、少しくらいお話をしてからでもいいのではないかとおっしゃられて、T大の理事長が彼女の伯父にあたりましてね、一人で行ってみたらしいんですが、やはりあってくれなかったと私に連絡をしてきましてね」
断ったと、さっき京助も言っていたのを千雪は思い出した。
「京助さん、ひょっとしてお付き合いしている方がいらっしゃるとか、千雪さん、ご存じありませんか? もしそうであれば、奈々子さんも納得されるかとは思うのですが」
千雪は何と答えたらいいかわからなかった。
ったく、俺に聞くなや。
少しイラついて千雪は心の中で言い放つ。
ただし原夏緒の展覧会を開催してくれた九条に対して暴言は抑えるべきだろう。
「いや、こんなこと千雪さんにお尋ねするのはおかしいですよね。ただ、まあ、奈々子さん、家柄もいいし、S女学院大を出て今はお父様が社長をされている会社の秘書課におられて、非常にまた美しい方だし、お父様は旧伯爵家のご出身で、こんな良縁はないだろうと、私も彼女のお母さまからお話を頂いた時、そんなことを思ったのですが」
そういうことが良縁で通る世界の話はわからない、と千雪は思う。
「いや、違うな、良縁と言われているだけなんですがね」
「え?」
千雪は九条を見た。
「私どもの親戚とかの間ではね。実際私は異端児で、そういった良縁の話を蹴って妻と結婚しましたからね。妻の両親は家柄とかとは縁のない人ですし」
「そういえば京助の亡くならはったお母さんもアメリカ人ですよね?」
「そうそう、京助さんのお父上も豪胆な方で、家柄とかそういうしがらみが嫌いな方でね。まあ、結局離婚されて、たまたま縁あって姉と結婚したんですけど、それもほんとたまたまアメリカで右も左もわからない姉が困っているところを助けたとかが縁だったらしくて」
「そうやったんですか」
「まあ、釣り書きでは結婚なんかできませんよ、ほんと。いや、実は、それより……」
九条はどうやら言おうかどうしようか迷っているという感じだった。
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