まさかあの日、大学で別れて以来いなくなるとは思ってもみなかった。
「って、どこにいるかもわからないってのか? 京都に帰ったんじゃないのか?」
そんな話を聞いた速水は身を乗り出すように聞いた。
「いや…………」
京助は言葉を濁した。
「まさか、警察………!」
「バカ。どこにいるかは見当がついている」
おそらく研二のところにいるはずだ。
「じゃあ、何で……」
速水は言いかけて言葉を切った。
ようすがおかしいと気にしていたのは京助のことだった。
仕事が忙しいのはわかっていたが、それがいきなりおかしなスクープ記事を目にして、京助を探していた。
いくつか店を覗いて、何件目かでここに辿り着いた。
京助のようすから深刻さを見て取った速水は、とりあえずグラスの酒を飲んだ。
「どうするんだよ?」
「どうしようもないだろ」
京助は席を立つと店を出て行った。
「何なんだ、あいつは。魂でも抜かれたみたいな顔しやがって!」
速水は拳を握った。
「克也、一人? 京助は?」
そこに現れた黒いスーツのくっきり美人はバーテンダーににっこり笑いかけながら、速水の横に座った。
「帰った」
「二人で京助をからかうって話はどこいっちゃったのよ? あたし、マティニね、うんと辛くして」
「たまには可愛げを見せてミモザなんかにしてみたらどうだ? 理香」
「マティニなんて可愛いもんじゃない」
「男はいないのか? 今」
「そっくり返すわ、克也」
「それより、ことは由々しき問題だぞ」
「何よ、芝居じみた言い方」
ハハハと笑うルージュの色が濃い。
ナチュラルメイクなんぞは確かにこの女には似合わないかもしれない。
くだらないことを考えつつも、速水はかいつまんでたったさっき京助から仕入れた情報を口にした。
「何よ、それ!?」
ゴクリとカクテルを半分飲んでから理香は速水に顔だけ向けた。
「タダの痴話げんかじゃなさそうだ。全く、悩んでいるんならカウンセリングに来いって千雪ちゃんにも言ったのに」
「ハ……、克也のとこなんか、行くわけないじゃない。千雪ちゃんに嫌われてるくせに」
事も無げに理香はのたまった。
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