メリーゴーランド272

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「一週間も雲隠れって、どこ行っちゃったのよ? 千雪ちゃん」
「俺にわかるか」
 理香に問い詰められて速水は履き捨てるように言った。
 数分の差で理香と入れ違えに店を出た京助は、ポケットで鳴った携帯に慌てて出た。
「ああ、小夜子さん」
 表示されている名前にガッカリしながらも出ないわけにはいかなかった。
 小夜子はスポーツ紙の記事を見て少しきつい声で真偽を聞いてきたのだ。
「あんなスポーツ紙の記事なんかまともに取らないでくださいよ」
 京助は適当にごまかした。
 実際はくさくさしていたところへちょうど来日していたカレンに誘われて寝たものの、それこそ寝起きが悪かったというのが本当のところだ。
 カレン自身は二年程前の自暴自棄な状態から立ち直りつつあるようだった。
 朝というより昼近く、二人でホテルを出たところをスクープされた。
 はっきり言って京助は何も考えていなかった。
 そんなことは京助の中ではどうでもよかったのだ。
「そうそう、千雪ちゃん、最近電話に出てくれないんだけど、お仕事忙しいのかしら?」
 京助はうっと答えに詰まる。
 小夜子にも大学を休んでいることなど何も話していないらしい。
 いや、小夜子の電話にも出ないというのはかなり問題ではないか。
「ああ、年末近いし、教授の手伝いと締め切りに追われて、電話どころじゃないと思いますよ」
「まあ、そうなのね。特に急用というわけではないからいいんだけど、身体を壊さないように京助さん、お願いね」
 小夜子の言葉は京助の胸にグサグサきていた。
「それは大丈夫ですよ。食事はきっちり管理してますから」
 おそらく研二ならちゃんと考えてやっているだろう。
「京助さんがついていてくだされば安心よね。忙しいだけじゃなくて、江美子さんが亡くなったことで、あまり口には出さないけど千雪ちゃん、やっぱりすごくショックを受けてると思うのよ」
「そうですね」
 やはり千雪が書けなくなったというのは江美子の死と関係なくはないように思われた。
 小夜子にそんなことをわざわざ告げて心配させるようなことをしたくないから、千雪は彼女の電話にも出ないのだろう。
 それに江美子のことを共有できるのは千雪にとっては研二なのだ。

 


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