俺ではだめなのだ。
京助は自分では結局どうしてやることもできなかったのだと、忸怩たる思いと悔しさで拳をいやという程握りしめる。
「最初は京助さんのこと信用してなかったけど、ちゃんと真剣に千雪ちゃんのことを考えてくださってるようだから、私もお二人のことを応援してますから」
今夜の小夜子の言葉は空しさのみを伝えてくるようだ。
いい加減切ろうとした時だ。
「この間、お義父様に付き合っている人がいなければ紹介したい人がいるって、言われたんでしょう?」
「え?」
ああ、この間のことか、と京助は思い出した。
そんなことはもう記憶の彼方に忘れていた。
「京助さんそれを断って、付き合っている人はいるけど紹介する状況じゃないっておっしゃったって、洋子さんに聞いたのよ」
まあ、それも今となってはだな。
うっかり千雪だとか言わないでよかったんじゃないか?
京助は自嘲した。
「千雪ちゃんにもね、二人が本気で付き合ってるのに、お義父様たちがもし二人のことに反対されたら、私は断固としてお義父様に抗議するって言ったのよ。反対するのなら、この結婚はやめにしますって」
「千雪に?」
話したのか!? 千雪にそんなことを?
余計なことを、と京助は眉根を寄せた。
千雪が自分のことであんたらの結婚を壊すような真似をよしとするわけがないだろう。
簡単に結婚をやめにするとか、言われたら頭痛がしてきそうだ。
そんなことで千雪のやつ俺と別れようとか考えたんじゃ……。
まさかオヤジが俺に紹介しようとしているとか聞いてとか?
そこまで考えて、京助は都合のいい解釈にフンと己をあざ笑った。
電話を切って歩こうとすると、きつい風が正面からぶつかってくる。
身体が冷え切っていた。
京助は足早にマンションへと向かった。
結構飲んだはずなのに、今の電話で酔いが醒めたような気がした。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
