メリーゴーランド285

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「映画とかになってもたら、俺の手を離れてるし、関係ないんちゃいます?」
 そういえば工藤は、映画の次はドラマ化が決まっているとか何とか言っていたが。
「三流探偵小説とか、克也のイヤミをマネしなくてもいいわよ。誰もほんとにそんなこと思ってやしないんだから。千雪ちゃん、いろいろあったから少しお休みするのはいいことだと思うわ」
 そう言ってから理香は、でも、と続けた。
「京助がおかしなことを言ってたから、確認したいんだけど、別れたとかって、冗談よね?」
 千雪は理香を見た。
「え、言葉通りですけど?」
 またサラリと口にする千雪に理香は絶句した。
「ちょっと、いったいどうしちゃったの? 何が原因? 京助のどこが気に入らなかったの? あいつ、好きになるとのめり込むからウザったいかもしれないけど、いいやつよ?」
 ふっと千雪は笑った。
「理香さんも長い付き合いなんですよね、京助とは。京助のこと、よう知ったはる」
「まさか、マジで、別れるつもりじゃないわよね?」
 理香の表情が強張った。
「速水さんなんか俺のこと目の上のコブみたいやし、せいせいするんやないですか?」
「克也のことなんかどうだっていいわよ!」
 思わず立ち上がった声高な理香の科白に、店内の客が振り返る。
 さすがに理香もそれは気にして、眉を寄せたまま座り直した。
「俺なんかおらんでも、京助には周りにいろいろいてはるやないですか。むしろ俺とおっても京助には何のメリットもないし……」
「メリットって何よ? 京助みたいにメリットなんて言葉とほど遠いヤツ、他にいないわ」
 理香は極力怒りを押し殺して、千雪を睨み付けた。
「千雪ちゃんいなくなったら、京助、泣いちゃうわよ?」
「やったら理香さんが何とかしたってやったらええんちゃいます?」
 千雪はそう言うと席を立ち、レジに向かう。
捨て台詞のような千雪の言葉に、理香はただ憤りに拳を握り締めながら、唇を噛んでいた。
 厨房で一段落ついた研二は、スタッフから、千雪と理香が何やら言い争っていたと聞いて気色ばみ、理香のところに歩み寄った。
「何ぞおしたんか?」
 研二は声を落として理香に尋ねた。
 振り返った理香は一つ溜息をついた。


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