女にはえらくもてるみたいなのに、俺の世話やくとか。
「お前、変なヤツ」
思い切りストレートに千雪に断言されても、「そうか?」と京助は意に介さない。
千雪のアパートにも上がり込み、京助が食事をつくってくれたりするようになったある夜、魚介類のパスタで夕食を済ませ、勧められるまま千雪もワインを飲んだ。
「フルーティだからお子様でも飲めるだろ?」
「うっさいわ、誰がお子様やね!」
真っ赤になって突っかかる千雪だが、さらに驚かされたのはいきなり京助にキスされたからだ。
「何すんのや! ドアホ! 変態!」
唇が離れてから、はたと何が起きたかようやく悟った千雪は、京助を突き飛ばして喚いた。
「そんなに怒んなよ、キスくらいで」
「俺は男や! ダチにキスなんかして何がおもろいんや! クソドアホ!」
「俺、男でも気にしないし、好きならキスくらい」
「俺は気にするわ!」
黒縁メガネにもさもさ頭、地味な服をわざわざ選んで、これならアホな気になるやつはおらんて、自信あったのに!
「お前、俺の眼鏡………」
「眼鏡がどうした? キスするには邪魔だな、そのメガネ。可愛いけどな」
ニヤつく京助が手を伸ばして千雪の眼鏡を取ろうとしたのを、血相を変えて千雪は飛びのいた。
素顔を見て女みたいやて思うたわけやないのんか?
可愛い?
「お前、やっぱ頭おかしいで!」
「わかったわかった。合意がなけりゃ、キスしない」
「誰が合意なんかするか! アホンダラ!」
散々千雪に罵倒されながらも、京助は翌日も翌々日も悪びれもせず、千雪の前に現れた。
「千雪」
うるさいわ、まだ眠いのに。
「千雪」
「うるさいて、京助………」
ややあって、「メシやで」という声がして、千雪は目を開けた。
あれ………?
「うたたねしよったら、風邪引くで」
千雪を覗き込んでいるのは研二だった。
夢?
いつの間にか毛布が掛けてある。
帰って来てから理香の言葉が頭から離れず、ついソファに横になっているうちに眠ってしまったらしい。
「……もうそんな時間?」
研二は笑った。
煮物の出しの匂いが漂っている。
「うわ、美味そうな匂いや」
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