メリーゴーランド288

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 女にはえらくもてるみたいなのに、俺の世話やくとか。
「お前、変なヤツ」
 思い切りストレートに千雪に断言されても、「そうか?」と京助は意に介さない。
 千雪のアパートにも上がり込み、京助が食事をつくってくれたりするようになったある夜、魚介類のパスタで夕食を済ませ、勧められるまま千雪もワインを飲んだ。
「フルーティだからお子様でも飲めるだろ?」
「うっさいわ、誰がお子様やね!」
 真っ赤になって突っかかる千雪だが、さらに驚かされたのはいきなり京助にキスされたからだ。
「何すんのや! ドアホ! 変態!」
 唇が離れてから、はたと何が起きたかようやく悟った千雪は、京助を突き飛ばして喚いた。
「そんなに怒んなよ、キスくらいで」
「俺は男や! ダチにキスなんかして何がおもろいんや! クソドアホ!」
「俺、男でも気にしないし、好きならキスくらい」
「俺は気にするわ!」
 黒縁メガネにもさもさ頭、地味な服をわざわざ選んで、これならアホな気になるやつはおらんて、自信あったのに!
「お前、俺の眼鏡………」
「眼鏡がどうした? キスするには邪魔だな、そのメガネ。可愛いけどな」
 ニヤつく京助が手を伸ばして千雪の眼鏡を取ろうとしたのを、血相を変えて千雪は飛びのいた。
 素顔を見て女みたいやて思うたわけやないのんか?
 可愛い?
「お前、やっぱ頭おかしいで!」
「わかったわかった。合意がなけりゃ、キスしない」
「誰が合意なんかするか! アホンダラ!」
 散々千雪に罵倒されながらも、京助は翌日も翌々日も悪びれもせず、千雪の前に現れた。
「千雪」
 うるさいわ、まだ眠いのに。
「千雪」
「うるさいて、京助………」
 ややあって、「メシやで」という声がして、千雪は目を開けた。
 あれ………?
「うたたねしよったら、風邪引くで」
 千雪を覗き込んでいるのは研二だった。
 夢?
 いつの間にか毛布が掛けてある。
 帰って来てから理香の言葉が頭から離れず、ついソファに横になっているうちに眠ってしまったらしい。
「……もうそんな時間?」
 研二は笑った。
 煮物の出しの匂いが漂っている。
「うわ、美味そうな匂いや」

 


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