「俺は行けるかどうかわからない、忙しい」
京助はつっけんどんな言い方しかできなかった。
こんな無茶苦茶な気分の時にうざったい家族の顔を見る気がしない。
「マギー一家にはニューヨークでも世話になったんだろ。顔くらい出しておけ」
だが紫紀の容赦ない命令とともに、電話は切れた。
「勝手なこと言いやがって」
気分転換に車でひとっ走り東京周辺をぐるっと回ってくればとも思ったが、さっきから酒を飲んでいる自分に、またイラついた。
京助が諦めてまたパソコンの前に座った頃、こちらもいきなり電話を切られた理香はいつものバーのカウンターにいた。
「おかしいわよ、京助ともあろうものが!」
怒りとともに理香は吐き出すと目の前のグラスを玩んだ。
「もう少しほっとけ。あの石頭は並大抵じゃない」
隣に座る速水が理香を窘める。
「だって別れた上に研二くんといるって言うのよ?」
「仕方ないだろ。高校時代からの切っても切れない仲なんだ」
「え、克也知ってたの?」
「これでも心理学者なんだ、一応。研二くんの視線はウソがつけない」
「どうすんのよ? 京助は諦めるしかないっての?」
理香は今にも噛みつきそうに言った。
「あいつがそう簡単に諦めるとは思えない。まあ、千雪ちゃんと研二くんはもう二度と離れるつもりはないよ、って言うんなら、仕方ないかもだが」
速水はビールを飲んだ。
「にしても、千雪ちゃんに何を言ったのよ? 克也、とことん嫌われてるわ」
その言葉に、速水は当時のことが脳裏に舞い戻り、渋い顔をした。
それこそあの時の自分の発言を消してしまいたいところだが、千雪はしっかり根に持っているのだ。
千雪はどうやら本気で速水を嫌っているようだが、速水としては千雪を嫌っているわけでもないし、何とか千雪の速水に対する認識を少しでも挽回したいというのが本当のところだ。
「まあ、俺としても京助のことは気になるし、ちょっと動いてみるか」
「どうするのよ?」
理香の言葉に対して、速水は小首を傾げ、苦笑した。
それこそ人の恋路に首を突っ込むのは愚の骨頂だと思い知ったはずの速水だが、それも承知でまたバカをやってみるか。
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