「千雪は研二のところにいますよ」
徐に三田村は言った。
「もともと二人とも相思相愛やったのに、研二のやつが、江美子が千雪を好きなのを知ってたよって身引いて金沢なんかに行ったからおかしなったんや」
速水は黙って聞いていた。
「当の江美子も菊子も桐島も俺も、二人が好きおうとることなんか知っとったのに、研二のアホが」
「研二くんは千雪くんのために離婚して上京したわけか?」
「いや、離婚は真由子さんが研二には別の誰かがおる言うて、ウツ状態になってもうて、結局真由子さんの方から別れを切り出したらしい。上京したんはたまたま、小夜子さん経由で研二の菓子に目を付けた芝さんの誘いがあったからで」
「おかしなもので、たまたまが重なることもあるからな」
研二が千雪のためにすべて投げ打ってやってきた、というドラマチックな展開とは少し違うわけか。
「千雪が研二のとこ行ったんは、やっぱ、江美子のことがあったからや思いますけど。俺ら同級生ですらショックやったんや。あいつら、江美子と研二と千雪、うまれた頃から仲良かったし、ショックの度合いもきつかったんや思う」
「なるほど」
「千雪が書けんようになったいうんも、その辺が原因やないか思うけど」
速水は三田村の言葉に怪訝な顔をした。
「待った、書けなくなったって、千雪くんがか?」
「ええ。何やもう、ずっと書いとった雑誌、依頼されとった分キャンセルしたらしうて。次はないみたいなことを言われたって、千雪は言うてたけど。他の雑誌の依頼も断ったて。ほんで、教授に相談して研究室もしばらく休みもろたて」
「そんな……ことになってたのか。それは由々しい問題だろう」
京助からはそんな話は聞いていないが、知っているからこそ静観しているのかも知れない。
「二人のダチとしては、モトサヤに収まってくれるんならそれがええ思いますけど? 京助さん自身はええ人や思いますけど、何せ女がほっとかんでしょ? しかも超セレブの次男なんて家からのプレッシャーも大きそうやし。えらい騒がれようやったし、紫紀さんと小夜子さん、東洋グループ次期CEOの結婚やなんて。その弟がまさか男とどうこうやなんて大問題ちゃいます?」
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