「確かに、LGBTQ云々言われて久しいが、日本でその認識がどの程度浸透しているかは疑問だしね。同性婚どころか、男女差別さえひどいものだ。自分の身うちが同性をパートナーに選んだなんてことがない限り、他人事だ。ましてやそれこそ自分の身うちがそんな相手を連れてきたら、まず簡単に許すことはないだろうね。当人にとってみれば誰が許さなくても関係ないんだけどね」
速水は客観論を述べた。
「我々外野が何のかのと口にしたところで、決めるのは当人たちだが、一つ京助に関して言いたいことは、あいつは、自分の判断に家族やしがらみのことなんか考えるようなやつじゃないよ」
速水はそれだけ言うと、三田村に「邪魔したね」と別れを告げてビルを出た。
いくら焦ってみても所詮、俺も三田村も外野だ。
要は当人が決めることで、俺らが出来ることなんかないのだ。
「にしても、千雪ちゃん、書けないとか、重症じゃないか。だからカウンセリングに来いって言ったのに」
ブツブツ呟いてから速水は空しくなって苦笑する。
「俺はちょとからかっただけだし、話半分で聞くもんだろ」
真に受けているんだか、俺が口にする何もかもが気にいらないんだか、千雪が速水を頼ることはないだろうが。
速水は溜息交じりに首を振りながら駐車場に停めていた自分の車に乗り込んだ。
ドアを開けるなりカレーの匂いが漂ってきた。
「ほんまに作ったんか?」
研二は思わず口にしながらキッチンに向かった。
「おかえり」
これから帰ると研二がラインしてきたので、時間に合わせて千雪は作っておいたカレーを温め始めた。
「おお、うまそうやんか」
研二は鍋の蓋をとって笑った。
「あたりまえや。カレーだけは何度も作っとる」
千雪はドヤ顔で言った。
「キーマカレーか、よう作ったな」
研二は本心から感心しているようだ。
「玉ねぎのみじん切りは、初めから挑戦せんと、フードプロセッサーまかせやから。ほんでも、何であんな目ぇ痛うなるんや」
「しゃあないわ。ほんでもようやったやん」
「箱に書いてある通りやったら、誰でもでけるんや」
フン、と千雪は子どもを褒めるように頭を撫でる研二の手を振り払う。
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